「土用」とは、立夏・立秋・立冬・立春直前のそれぞれ約18日間を示す言葉。昔の暦では日を干支で数えていたため、土用の丑の日は「土用の期間中に訪れる丑の日」を意味する。
土用は毎年変わることから“土用の丑の日”も毎年変わり、また、夏のイメージが強いが、年に何回かやってくる。そして今年最後の土用の丑の日は10月29日である。
ではなぜ、土用の丑の日にうなぎを食べるのか。万葉集には「石麻呂に 吾物申す 夏痩せに よしと云ふ物ぞ うなぎ取り食めせ」(吉田石麻呂よ、夏痩せに効くうなぎというものがあるから、捕って食べてみてはどうだ?)と、大伴家持が詠んだ歌がある。そもそも日本では1000年以上前から、夏バテにはうなぎ!という知恵があったことがわかる。
“土用の丑の日=うなぎ”が定着したのは江戸時代のこと。売り上げ不振に悩んだうなぎ屋が、蘭学者・平賀源内に相談したところ、「本日、土用 丑の日」と書いた張り紙を出すことを勧められ、その通りにしたら大繁盛したことがきっかけとも伝わる。当時、丑の日に“う”のつくものを食べると病気をしないと信じられていたらしい。ちなみに江戸時代の“蒲焼き”は、その文字通り、蒲の穂のようにぶつ切りを串に刺して焼いただけの、安い屋台料理だった。
うなぎはビタミンの宝庫で、さんまと同レベルのDHA・EPAも豊富に含む。このほか胃の粘膜を保護する働きのあるムチン、カリウム、カルシウム…と、栄養満点。源内先生のキャッチコピーも、あながち誇大広告ではなかったようだ。
家庭料理研究家の松田美智子さんはうなぎについてこう話す。
「昨今、うなぎの価格が高騰しています。今年はちょっと値が下がったようですが、それでも家族で外食するとなると勇気が必要ですよね。そこで、デパ地下などで販売しているものや、専門店が製造している上質な蒲焼きの真空パックなどを。温めればすぐにいただけますし、ひと手間加えれば、幾通りにも楽しめます」