次に距離。同じコンマ5秒差でも、1200メートルと2000メートルの場合はもちろん違う。同じ着差ならば、たしかに距離の長いほうが頑張った印象を受けますね。長い距離のほうが逆転可能と思うかもしれません。でも実は逆で、短い距離のほうが着差を縮められ易いのです。
2000メートルのレースで、普通の脚質ならば、レースが落ち着く頃には自分のポジションにもっていくことができるはず。それができず、コンマ5秒も離されているということになれば修復しづらい。チャンスがあったにもかかわらず、3馬身ぶっちぎられたという感じです。
道中をいい位置につけたけれどもコンマ5秒離されたならば、さらに完敗感が漂う。競馬を分かっているわりには勝てない。その時の力不足、体力の状態を見て、思い切って放牧に出すこともあります。
つまり、いい競馬をしてコンマ5秒差というのは厳しい。3歳未勝利戦にそういう傾向が多いようです。
距離が短い場合のほうが、次走への修正の余地が大きいわけです。たとえばスタートでもたついて道中で好位につけられず、勝ち馬にコンマ5秒差で届かなかった場合。それならなんとかなりそうです。
秋のGIの先駆け、レッドファルクスが勝ったスプリンターズSは興味深い結果になりました。11着のセイウンコウセイが1着とコンマ5秒差。なんとコンマ5秒差の中に11頭がひしめいていた。もちろん高レベルの争いでしたが、9着でも10着の馬でも、1200メートルのコンマ5秒差だから次走はなんとかできる、という見方もアリです。
●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位(2017年10月15日終了現在)。今年は13週連続勝利の日本記録を達成。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。『競馬感性の法則』(小学館新書)が発売中。
※週刊ポスト2017年11月3日号