国内

教員との関係が原因の自殺「指導死」に潜む複雑な問題

福井県池田中の男子生徒の自殺は「指導死」か

《いじめ認知、最多32万件》、《昨年度より10万件増》。10月26日に文科省が公表した2016年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を受け、新聞各紙にはそんな衝撃的な見出しが躍った。

 同調査によると、全国の小中高校などにおける「いじめ認知件数」は前年度から約10万件増え、32万3808件で過去最高を更新した。だが、その結果からは単純に「いじめが増えている」とはいえないという。

「文科省は今年3月に定めた『いじめ防止基本方針』で、『ふざけあい』や『けんか』もいじめに含めるよう各教育委員会に通知しました。つまり、いじめとしてカウントする範囲が大きく広がっただけなんです。そのため、そういった行動が起きがちな小学校で認知件数が8万件以上増えました」(教育関係者)

 センセーショナルに報じられながら、実際には前年度とは同じ基準で比較できない数字なのだ。

 それよりもこの調査には目を向けなければならない数字がある。子供の「自殺」数が急増しているのだ。自殺した児童生徒の数は前年度に比べ29人増の244人。その数字は過去30年間、つまり平成に入ってから最多である。

 その中には、ここ最近、連日のように報じられている福井県での痛ましいケースも含まれているはずだ。今年3月、福井県池田町立池田中学校2年の男子生徒(当時14才)が校舎3階から飛び降り、自ら命を絶った。

 全校生徒40人という小さな学校で、男子生徒は男性担任から「おまえ(生徒会役員を)辞めてもいいよ」と周囲の生徒が身震いするほどの大声で怒鳴られたり、宿題を提出できなかったことに対して、女性副担任に理詰めで迫られ過呼吸を起こしたりしていた。

 10月15日に第三者委員会がまとめた報告書では、「担任、副担任から立て続けに強い叱責を受けた」ことが自殺の原因と結論づけられた。244人の自殺理由のうち、もっとも多いのは「家庭不和」と「進路問題」でそれぞれ27人。池田中のケースのような「教職員との関係での悩み」は3人だった。

 そうした自殺を「指導死」と名づけたのは、『「指導死」親の会』共同代表の大貫隆志さんだ。大貫さん自身も2000年、中学2年だった次男を指導死で亡くしている。

「指導死とは簡単に言うと、生徒指導によって子供が精神的あるいは肉体的に追い詰められて自殺することで、自殺の原因が“指導そのもの”や“指導をきっかけとしたもの”と想定できるものです。多くの場合、指導を受けた直後に子供が亡くなっています」(大貫さん)

◆指導死の4つの定義

 池田中の男子生徒も、自殺を図ったのは過呼吸を起こすほどの叱責を受けた翌朝のことだった。大貫さんらによって、指導死には以下のような4つの定義がなされている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

12月9日に亡くなった小倉智昭さん
【仕事こそ人生でも最後は妻と…】小倉智昭さん、40年以上連れ添った夫婦の“心地よい距離感” 約1年前から別居も“夫婦のしあわせな日々”が再スタートしていた
女性セブン
去就が注目される甲斐拓也(時事通信フォト)
FA宣言した甲斐拓也に辛口評価 レジェンド・江本孟紀氏が首を傾げた「なんでキャッチャーはみんな同じフォームなのか」
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
NBAレイカーズの試合観戦に訪れた大谷翔平と真美子さん(AFP=時事)
《真美子夫人との誕生日デートが話題》大谷翔平が夫婦まるごと高い好感度を維持できるワケ「腕時計は8万円SEIKO」「誕生日プレゼントは実用性重視」  
NEWSポストセブン
元夫の親友と授かり再婚をした古閑美保(時事通信フォト)
女子ゴルフ・古閑美保が“元夫の親友”と授かり再婚 過去の路上ハグで“略奪愛”疑惑浮上するもきっぱり否定、けじめをつけた上で交際に発展
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン
12月9日に亡くなった小倉智昭さん
小倉智昭さん、新たながんが見つかる度に口にしていた“初期対応”への後悔 「どうして膀胱を全部取るという選択をしなかったのか…」
女性セブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン