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オムロン創業者・立石一真氏はIoT時代の予見者だった

 さらに、立石さんは交通渋滞の「見える化」にも取り組んだ。無接点技術と自動販売機で開発したコンピューター技術を駆使し、車両検知器や車の通行量によって信号機の時間をコントロールする電子交通信号機などを開発したのである。駅の自動券売機や自動改札機も、最初に開発したのはオムロンだ。

 実際、当時オムロンの経営コンサルタントだった私と立石さんの対話から、多くのアイデアや特許が生まれた。立石さんは、お金、商品、車、通勤客など、動いているものはすべて商売のタネになるという発想で、次から次へと私に質問を浴びせてきた。それに私が答え、さらに立石さんが疑問点を質問するという問答を繰り返すことで、様々な新製品が誕生したのである。

 一例は、コンビニのクローズド・キャッシュレジスターだ。かつてコンビニでは、売り上げとキャッシュレジスターの中の現金が一致しないことがよくあって夜勤明けなどの引き継ぎに時間がかかり、大きな問題になっていた。そこで私がキャッシュレジスターをクローズドにすることを提案した。つまり、お金を入れたらお釣りとレシートだけが出てくるという仕掛けである。原理はATMと同じだから、キャッシュレジスターもATMも製造しているオムロンなら、すぐに開発できると考えたのである。

 あるいは、空港のカウンターでチェックインした乗客が搭乗時間になってもゲートにやってこない、という問題の対策も考えた。搭乗券と一緒にトランスポンダー(無線中継器)を渡して乗客が空港のどこにいるかわかるようにし、トランスポンダーは搭乗ゲートで回収する、というシステムだ。このアイデアは、今は携帯電話で簡単にできるようになっている。

 立石さんに会うと、いつも朝から晩まで質問攻めだったが、そのおかげで私たちは山ほど特許を取ることができたのである。

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