稽古後、見学に来たファンと撮影会(写真は千代大龍)
◆ファンとの距離の近さが魅力
武蔵川部屋では親方や力士は「小学生相撲」や「植樹祭」などのイベントに参加し、市内の「イオンなかま」のオープンスペースで激励会が行なわれ、多くの市民が集まった。貴乃花部屋では、九州場所前に開催される「炭坑節まつり」に貴乃花親方や貴景勝らが参加。「田川チビッコ相撲大会」の審判や裏方として手伝い、炭坑節総踊りにも加わって市民と一緒に盛り上がっていた。
千代大龍や千代の国など関取5人が在籍する九重部屋では、稽古場の周辺にファンが集まり、稽古後には人気力士の千代丸に赤ちゃんを抱っこしてもらう記念撮影に希望者が殺到。最後のひとりまで笑顔で記念写真に納まっていた。このファンとの距離の近さが、地方場所ならではの魅力である。
タニマチや地元の有名人も稽古見学に多数訪れる。地方場所では米、肉、魚、野菜類はもちろんのこと、調味料や日常必需品までタニマチが差し入れしてくれるのが慣例。
角界最高齢力士の華吹がちゃんこ長として切り盛りする立浪部屋でも、米や野菜などが山積みされていた。その立浪部屋には、飛天龍と同級生のプロ野球、ソフトバンクの本多雄一が顔を見せていた。
場所前の「前夜祭」が行なわれるのも地方場所だけ。名古屋と大阪は新聞社主催で行なわれるが、九州場所では主催はNHK福岡放送局。本場所が開催される福岡国際センターの土俵で、郷土出身力士の琴奨菊と嘉風のトークショーや横綱土俵入り、チビッコ相撲、力士のカラオケなどが行なわれ、土俵を囲んだ500人が声援を送った。
1年の締めくくりとなる九州場所の盛り上がりに日馬富士の暴行事件が水を差したが、その分、土俵の充実を期待したいところである。
■撮影/作田祥一、取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2017年12月1日号