◆金正恩氏の次なる指導者
中国は、米国本土を核攻撃可能な弾道ミサイル(DF-5)を1981年から配備しており、脅威度は北朝鮮よりも遥かに高い。中国は日本を攻撃するための弾道ミサイルも配備していることから、日本にとっても大きな脅威である。
その中国に米国が譲歩したら、何のために金正恩政権を倒したのかわからなくなる。北朝鮮国民を独裁政権からの解放することにはなるが、朝鮮半島を不安定化させただけで終わる可能性もある。
金正恩政権が崩壊した場合、2013年に処刑された張成沢が指導者になるのが中国にとっては、最も都合がよかった。だが、張成沢がいなくなったいま、選挙により指導者を選出するにしても、有力者が次々と処刑され、派閥が一掃された北朝鮮に、果たして中国が後押しするような人物がいるだろうか?
それと同時に、米国が後押しするような人物はいるだろうか?
北朝鮮で新政権を樹立するためには、国連選挙監視団により公正な選挙が行われることになるのだが、形式上の選挙しか経験していない北朝鮮国民にとっては、まず、民主主義の意味を理解してもらうことから始めねばならない。北朝鮮(朝鮮半島北半分)が政治的にも経済的にも安定するのに数十年の年月と、膨大な費用がかかるだろう。
金正恩が「最大限の圧力」に屈した時、朝鮮半島で何が起きるのか、はっきりしているのは、朝鮮半島だけでなく極東全体が不安定化するということだ。トランプ政権は体制の転換は望まないとしているが、政権崩壊を伴わない「米国の意向に沿った改革」が現在の北朝鮮で可能とは思えない。
金正恩政権を存続させるということは、米国はテロには反対するが、人権を蹂躙している非人道的な政権の存続は認めるという矛盾が生じることになる。トランプ政権はこの矛盾をどう解消するつもりなのだろうか。