ビジネス

パイロット不足で争奪戦が激化 年収2000万円超の攻防

日本のパイロット資格や適性検査の難易度は高い(写真:アフロ)

 機長の退職により定期便の欠航を余儀なくされているエア・ドゥ。これまでもピーチ・アビエーションやバニラ・エアで運休が相次ぐなど航空業界を取り巻く「パイロット不足」の問題は年々深刻さを増している。

 そこで起きているのがパイロットの争奪戦だ。元パイロット、現役の航空業界関係者、航空経営研究所の研究員らの情報をもとに、厳しい内実に迫った。

■パイロットは何人足りないのか

 国土交通省は2022年に必要なパイロットの数を6700~7300人と予測している。だが、現状いるパイロットは5700人足らずで、定年退職による自然減も考慮すると、新たに年間200~300人の確保が必要とされている。

「副操縦士の数はそこそこいるが、能力的にそのすべてが機長に昇格できるわけではないし、現役バリバリでやっている機長は定年退職直前の60代の人たちも多い。このままでは今以上にパイロット不足で運航できない状況が出てくるだろう」(業界関係者)

 パイロットの一斉リタイヤが懸念される“2030年問題”はすでに始まっているのだ。

■若手パイロットの養成はどれだけ期待できるか

 パイロット不足の対策として、国が航空大学校の採用枠を増やしたり、航空会社がパイロット養成課程を持つ私立大学への奨学金制度を創設したりするなど若手の育成に力を入れ始めているが……。

「パイロットになるには、専門的技術はもちろんのこと、一般的な基礎学力も必要だし、日々努力する素養がなければ務まらない。若手の養成枠を増やしたところで、その分採用数も増えるとは限らない」(航空経営研究所)

■機長ヘッドハンティングの現場

 パイロットを自社で養成するのは長期的な戦略としては有望だが、直近の人材難を解消する手立てにはならない。より高度な能力が求められる機長ならなおさらだ。

 そこで、一番手っ取り早いのが、他の航空会社から優秀な機長を引き抜くヘッドハンティングだ。実際にどんな手法で行われているのか。

「一般的にはパイロット専門の派遣会社や斡旋会社を通じて募集をかける。外国人パイロットも含めて世界中から応募はくるが、なかなか採用できる人材がいない。10人応募してきたら、1人か2人採用できればいいほう。いざ、採用しても日本のパイロットライセンスを取得できなかったり、途中の訓練で辞めてしまったりする人も多い。

 コスト削減を進めるLCC(格安航空会社)の中には、派遣会社に抜かれるマージンを抑えようと、直接ヘッドハンティングに乗り出す会社もあるが、状況は変わらない。アメリカに候補者がいるからと現地に出向いて適正検査をしても、1人も採用できずに帰ってくるなんてケースはよくある」(元パイロット)

 それだけ日本のパイロット資格や適性検査の難易度が高いことの裏返しではあるが、経験豊かで一定レベル以上の機長を探し出すのは容易ではないようだ。

あわせて読みたい

関連キーワード

トピックス

遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン