「決して敬意を払っていないわけではないのですが、認知症が進んでくると、同じやり取りを繰り返さなくてはいけないケースが多くなる。そうすると、つい子供に言い聞かせるような口調になっていくのかもしれません……」

 ケアする側も、コミュニケーションに苦心しているのは間違いない。ただ、判で押したように「年寄りは子供扱いしたほうがいい」と対応をする看護師の場合、“モヤモヤ”では済まされない事態につながることもある。医学博士で山野医療専門学校副校長の中原英臣氏の指摘だ。

「こうした言葉遣いになるのは、親が幼い子供と接するように、看護師側が患者を“コントロールして言うことを聞かせる存在”と捉えているからだと考えられます。

 それがうまくいっている間はいいのですが、裏を返せば、患者が意に沿わない行動を取った際に、看護師が叱り飛ばしたり、手をあげたりといったことにつながりかねない危険も孕んでいるのです」

 重大問題に発展するのを防ぐためにも、看護師の対応を不快に感じた場合、「病院や介護施設に設置されている相談窓口の相談員に伝えるべき」(医療・介護施設での接遇研修に携わる、しのコーポレーション社長・濱島しのぶ氏)だという。

 懸命に仕事に励む看護師と良好で、かつ大人な関係を築きたいと考えるのは当然のことだろう。ここ2年続けて入院を経験したコラムニストの小田嶋隆氏(61)は、こんな言い方をする。

「病院で人間観察をしていると、看護師に対して横柄な態度を取っている患者は、明らかに高齢男性に多い。敬われて当然、子供扱いするなと怒る前に、自らの振る舞いが“子供”のようではないか、振り返ってもいいのでは」

 ケアする側もされる側も、考えさせられる話だ。

※週刊ポスト2017年12月15日号

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