1973年にはNHK時代劇『天下堂々』に出演している。
「役者の仕事が面白いと思い始めた時、『NHKに出なきゃだめだ』と考えました。でも僕も事務所もどうすればいいか分からない。それで直接電話をかけてNHKに行ったんです。そうしたらプロデューサーの方が話を聞いてくれて、演出家の岡崎栄さんに会わせていただけました。『一週間後に来い』と呼ばれて行ったのが『天下堂々』でした。
この時ラッキーなことに、NHKが演技の特訓の場を用意してくれたんですよ。劇団俳小の早野寿郎さんという素晴らしい演出家が先生についてくれて。型、動き、喋り方、踊り、発想の仕方、全てを教わりました。
役者ってこんなに勉強するんだと思いましたね。それで、そこから先は個人的に学ばないといけないので、お金はなかったですがここは払ってでもやらないとしょうがないだろうということで、『ぶどうの会』という劇団にお願いしてレッスンを受けるようにしました。
初めてみるものばかりで、時代劇の芝居は全くできませんでした。NHKが凄いのは衣装の着方から所作から立ち回り、スタッフが教えてくれる。『体格が良すぎるから腹布団入れろ』とかね。何かを作る面白さを知って、『役者をやってみたい』と心から思えるようになりました」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
■撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2017年12月15日号