ライフ

高齢者のうつや介護家族のうつ、もしかしたら鉄不足かも

高齢者・介護家族のうつは鉄不足が原因のことも

 親が介護を必要とする頃には、子世代の方も結構大変だ。仕事は超繁忙期、子育ても過渡期。そして更年期も到来する。だるい、眠れないなど絶不調のピークだ。怖いのは、不調に慣れ、体のSOSを見過ごすこと。介護を含め様々な責任を担うために、倒れるわけにはいかない。そんな境遇を味わったN記者(54才・女性)が、自身の苦労を振り返る。

 * * *
 認知症と診断され、母が要介護状態になったとき、母は78才、私は49才だった。私はまさに更年期のど真ん中。つねにだるい。だるいというのは厄介で、医者に駆け込んで訴えるほどでもないが、市販薬や生活改善などセルフケアを行おうという気力もなく、結局だるいままなのだ。

 そしてひとり娘は当時、中学2年生。のんびり屋の娘が受験という人生初の闘いを前に、崖っぷちで共闘する心境だった。担任教師や塾の講師の言葉には娘以上に動揺し、怒りと祈りの繰り返し。気の休まるときがなく、夜眠れないこともよくあった。取材や原稿書きに追われながら合間に家事を回していく20年来の生活が、心底つらく感じるようになっていた。

 そんな時に始まった母の介護。私は父の葬儀や相続、母の生活関連の手続きなどに追われ、独居になった母は昼夜問わず電話があり、私がお金を盗ったとなじる。認知症とわかっていても、母との心の距離はどんどん離れていった。

 日常では娘の高校教師、母の主治医、スーパーの店員の言動にまで激しく苛立ち、「血管が切れそうだーッ!」と叫んでは落ち込み、家族と口をきかない日もよくあった。

 そんな状態が1年近く続いたある日。母の通院につき添い、待合室で待っていると、「あなた、Mさん(母)の娘さんよね?」と、不意に声をかけられた。驚いて見上げると同じ病院の女医さんだった。

「ちょっと失礼、診せてね」と、私の手を取り、裏表に見て、いきなり私の目の下をあっかんベーした。

「お母さんを家に送ったらすぐ、あなたの地元のお医者さんで貧血の検査をしてもらいなさい。いい? すぐよ」

 貧血には心当たりがあった。若いころから貧血気味で、40代になってからはときどき薬の処方も受けていた。それでも貧血の症状は忙しいと自分でも気づかない。長年の持病なのにすっかり忘れていた。

 女医さんと私のやりとりを母が見ていたようだった。

「Nちゃん病気なの?」と、私の額に手を当てた。母が私を労いたわるのは久しぶりのことだ。私は恥ずかしくて、「あたしも更年期だからね」。すると正気の目をした母が、「すぐにお医者に行きなさい。ママはひとりでも大丈夫よ」と言ってくれた。嬉しかった。

 母を送ったその足でかかりつけの病院に直行。検査をするとかなり深刻な貧血だった。

「よくここまで歩いて来られたわね…という数値よ。のみ薬では間に合わないので、点滴治療します」と、私のかかりつけの女医さん。

 それから週2回、約30分の点滴治療が始まった。ベッドに横になると何とも心地よく、冷たい点滴が血管に入ると体が修復されていくようで気持ちも上向いた。そして目を閉じる30分の間、私を心配し、厳しくもやさしい声をかけてくれた女医さん2人と母が順に浮かんで来て、何度も泣きそうになった。

 おかげで1か月半後にはすっかり元気になり、またいつもの母との伴走に戻った。

※女性セブン2017年12月21日号

関連記事

トピックス

二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン