江ノ電江ノ島駅の近くで”江ノ電もなか”を販売する「扇屋」の店頭には、江ノ電として活躍した旧玉電車両の前面部が看板替りに展示されている。


 このデハ80形が、宮坂区民センターの広場に展示されるまでに紆余曲折を経ている。世田谷区世田谷総合支所地域振興課の担当者は言う。

「1990(平成2)年に宮坂区民センターを開設するにあたり、事前にデザインコンペを開催しました。そのコンペで決まったデザインは世田谷線をまたぐような構造で、区民センターからホームに出入りできるように設計されていました。また、併設される広場に旧玉電の車両を保存展示することも盛り込まれていました。ところが、そのデザインは法律的に実現が難しいことがわかり、お蔵入りになったのです」

 現在、東急田園都市線となっている区間には、1938(昭和13)年まで玉川電気鉄道(玉電)と呼ばれる鉄道会社が路面電車を走らせていた。玉電が東急に統合されて東急玉川線になった後も、道路の上を走っていたので玉電の面影は残っていた。当時、まだ国道246号線の自動車交通量は少ないとはいえ、自動車に混じって道路の上を悠然と走る玉電を懐かしむ区民や鉄道ファンは少なくない。田園都市線を”たまでん”と呼んで親しむ高齢者も健在だ。

 宮坂区民センターデザイン案を白紙撤回したものの、世田谷区はファンの気持ちを汲み取って旧玉電車両を広場に展示することを決めた。

「旧玉電時代に走っていた車両は、老朽化のために大半がスクラップされています。現在、残っているのは東急が運営している『電車とバスの博物館』内に展示されているデハ200形と宮の坂駅前のデハ80形の2両だけです。旧玉電の歴史を伝えていくためにも車両展示をすることになったのです」(同)

 デハ80形は玉電から江ノ電に売却され、1990年に世田谷区に引き取られるまで現役で活躍していた。宮坂区民センターの竣工に合わせて、江ノ電から戻ってくる。まさに「凱旋」ともいえる感慨深い里帰りになるはずだった。

 ところが、一部の区民や鉄道ファンが抱く深い玉電への愛着が思わぬ形で暴発する。

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