ロイヤルホストに設置してある喫煙専用ルーム
直営・FC合わせて40店舗以上展開するビアレストランの「キリンシティ」がエリア分煙の取り組みをスタートさせたのは2001年から。当時はまだ食事をしながらたばこを吸うのは普通の光景。しかも、たばこと相性のいいアルコール類をメインに提供してきた同店も「全店全席喫煙OK」だったという。
ところが、時代背景とともに徐々に喫煙席と禁煙席を分けるようになったという。キリンシティ店舗開発部部長の沼田昌彦氏が話す。
「最初はたばこの嫌いなお客様のために、フロアの一角を禁煙席にして、それを順次進めることで空間分煙を行ってきたのですが、『喫煙席から煙が流れてくる』といった声や、『カウンターでたばこを吸っている人の煙がビールの泡についてイヤ』とのご意見もありました。
キリンシティでは2012年にビアパブから食事も充実させるビアレストランへと業態コンセプトを一新させたのを機に、既存店のリニューアルや新規出店の際には飲食フロアの全面禁煙を掲げ、別に喫煙ルームを設けることにしました」
喫煙ルームの設置といっても決して容易い対策ではない。
「設置する場所によっては席を数席なくさなければならないので、その分の売り上げ減は想定しておかなければなりませんし、何よりも1か所つくろうと思ったらざっくり150万~200万円のコストがかかります。さらに、商業施設に入っている店舗であれば、設備面で細かい制約もあります」(沼田氏)
東京・銀座中央通りから程近い「キリンシティプラス東京銀座店」でも、昨年の店舗リニューアルに併せて定員4名ほどの小さな喫煙ルームを設置したが、一時売り上げは大きく落ち込んだという。同店の豊田雅弘店長がいう。
「リニューアル直後の売り上げはそれまでの約2割減。特に影響が大きかったのは夜のお客さんよりも昼のランチ客。食後にコーヒーを飲みながら一服するのを楽しみにしていたサラリーマンの常連客が一斉に来なくなってしまったんです。今でも『喫煙ブースがあります』と説明しても、『テーブルで吸えないなら帰る』と去っていかれるお客さんが1日に1組か2組はいます」
それでも喫煙ルームを設けたおかげで、たばこを吸わない女性や子連れのファミリー層など新たな顧客も掴んでいると話す豊田氏。今後は、店頭に“喫煙ルーム有り”を示す分かりやすいロゴマークを掲示していく方針だという。
「今はグループのお客さんの中で1人でも非喫煙者がいたら迷わず禁煙席を選ぶ傾向にある時代。ただ、店舗内の飲食スペースは全面禁煙とし、たばこを吸いたい方は席を立って喫煙ルームに行くという喫煙スタイルがもっと定着すれば、店にとってもお客様にとっても居心地のいい空間になると思います」(前出・沼田氏)