「現代の子供たちは、体罰を理解する体力も知識もないと思います。今はとにかく痛みを避ける『無痛社会』。演技の最中にポンと頭を叩かれただけで、『親からも叩かれたことはない!』とパニックになる若い俳優も多い。しかし、人生から痛みを一切排除してしまうと、非常につまずきに弱い人間になってしまいます。もちろん、それを愛のない体罰の言い訳にしてはならないのですが…」

 武田の言うところの「無痛社会」の果てには何が待っているのだろうか。

『金八先生』に教え子として登場していた三原じゅん子は痛みを知らない子供が増えることで、「加減」の仕方がわからなくなることを心配している。

「昔はよく、近所のおじさんおばさんにゲンコツをもらっていたし、お友達のご両親からもお尻を叩かれていた。その頃の大人たちは、どのくらいの強さで何度叩けば痛い思いをしないのか、加減を知っていた。その痛みを知ることで、子供も加減の仕方を覚えた。

 だけど今の子供たちはそうした痛みの実感を知る経験が少ないので、子供同士のけんかでも、加減がわからない。痛みがバーチャルなものになっているから、命を落とすような体罰やいじめに至ってしまうのではないか」

 この世から“愛の鉄拳”がなくなることで、本当に怖いのは、人間の“生きる力”が失われることではないかと武田が問いかける。

「快適、安心、安全という感情だけで日々生活していると、“人生における困難を突破する力”がなくなる。人間には無様な負けをしたり、意味もなく理不尽なことをされて落ち込む経験が必要です。なぜなら、落ち込んだり絶望したりした後しか希望はやってこないから。最初から希望にあふれた人はいないし、そんなのは希望じゃなくて妄想です。だから私たちは痛みや苦しみも含めたすべての感覚を日々味わう必要があるのです」

※女性セブン2018年1月4・11日号

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