国内

「荷受け代行」詐欺 SNSを通じて被害者続出の内幕

 あとで分かったことだが、和美さんがせっせと「荷受け代行アルバイト」の一環で業者に転送していた荷物の中身は、勝手に自分の名義で契約された携帯電話やタブレットだったのである。

 今、爆発的に利用者が伸びている「格安携帯電話」や「格安SIM」。免許証の写真などを撮影し、ネットを通して個人確認をするというかなり簡略化された契約方法で、そこに記載された住所へ携帯電話やパソコンが送られるという仕組みだ。荷物よりも請求書は後に届く。請求書が届くまでの間、和美さんはそうとは知らず、自分が支払うことになる携帯電話等を転送していた、とういうことになる。

 ネットバンクの口座も、似たような手口で開設が出来るため、当人に無断で作られた口座が、ブラックマーケットで流通しているとも噂される。個人情報と便利な仕組みを悪用した、新しい詐欺の形なのだ。

「騙されたという恥ずかしさから夫には言えずにいたのですが、二十五万の請求書が来て終わったと思いました。素直に白状し、警察にも行きました」

 実は、この手口の詐欺は、携帯電話会社やカード会社に相談するだけでなく、消費者生活センターなどの救済機関に相談すれば、解約金のみの支払いで済むケースもあるのだという。和美さんがなぜ全額を支払ってしまったのかといえば、第一には「そういった知識がなかった」こと、そして携帯会社からは「あなたが買ったと証明されているし、荷物もあなたの居住地に発送し、あなたの受け取りサインもある」と言われ続けるうちに「騙された自分が悪い」と思い込み、すっかり諦めてしまったからであった。

 警視庁は12月15日「荷受け代行」のアルバイトに応募した人物の個人情報を悪用し、携帯電話を勝手に購入契約したなどとして、無職の男らを逮捕。この報道を見て、自分を騙したのも、この無職の男らではないかと警察に再度連絡。二十五万円を取り戻せるのではないかと淡い期待を抱いたが……。

「被害が確認された事案に、私の名前、個人情報はなかったそうです。夫からは”バカ”と詰られ辛い。身に覚えのない携帯電話の解約にも、追加で三万円程度支払った。生活のためにと思ってやったことなのに」

 うまい話には裏がある、とはよく言ったものだが、和美さんのような境遇の女性を狙い撃ちにしているあたり、悪質性は相当高いと言える。また、和美さんが荷受け代行アルバイトに応募してしまったキッカケでもあるSNSの投稿は、その後人知れず削除されていた。

「おしゃれでかわいい、若いお母さんのSNSでした。とても良い生活をしていて、アルバイトをすれば、同じような生活ができると……」

 その人物は、SNS上で自身の派手な生活っぷりを披露し、多くのフォロワーを抱える、巷では“インフルエンサー”などと呼ばれる属性の女性だったことも、言い添えておきたい。荷受け代行の他にも、民泊施設へ荷物を届けたり、民泊施設に滞在し荷受けするなどといった「バイト」の募集も行っていた。

「なんでも疑わなければならない」という日常には嫌気がさすが、騙す側の手法は日々進化し、被害者をあの手この手で取り込もうとする。一時の憧れや羨ましさから、目が眩んでしまうこともあるかもしれないが、SNS上でのやり取り、特に相手が”見えたような気になってしまう”関係性だからこそ、情報を鵜呑みにしないよう注意すべきだ。

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン