「この頃はバブル景気も終わっており、日本経済の停滞が始まった時期。いろんな意味で、スムーズに事が運ばなくなっていた時代と役柄が上手くシンクロしました。木村拓哉が答えを教えてくれたわけではなく、私たちと同じように悩んでいる、もがいて生きる姿をドラマで演じたことで共感を得たのだと思います」
木村は役作りにおいて他の役者と異なるアプローチをしているという。
「共演した浅野忠信が『自分はその人物の性格や心理といった気持ちを考えるけど、木村拓哉の場合は医者の役だとすると手術の技術など仕事内容を勉強する』と、その役作りに驚いていました。それでいて、役になりきろうとはしない。自分の経験や知識、生き様がどんな役にも出るし、それが役を生きたものにするという考え方です」
SMAP解散騒動以降の彼は、逆風の中にいると言っていいだろう。
「その時々で強さは違いますが、木村拓哉はもう20年以上逆風と対峙してきた。その中で、世間との距離の取り方を見つけてきたと思います。彼は『プレーヤーでありたい』と常々言っています。監督やプロデュースの立場ではなく、一役者として演じることに無限の面白さを感じている。ある意味、作品を演じるチャンスさえあれば、良いのだろうと思う。ドラマや映画で彼の持つエンターテイメント性を見せられれば、逆風は自然に弱まるのではないでしょうか」