金正恩はピョンチャン五輪にどう出るか? かねてからの「朝鮮半島核戦争の危機」を国際社会に印象付けるため、1988年方式で五輪妨害・破壊工作に乗り出すかもしれない。あるいは「30年前の失敗」を教訓に、和平あるいは平和を演出し、軍事圧力をかける米韓や制裁強化の国際社会を反転させようとするのか。
国際社会としては30年前の「まさか」を教訓に心構えと備えは欠かせないが。
東アジアでは今後、オリンピック開催が相次ぐ。ピョンチャン冬季五輪の後は2年後の2020年に東京五輪、その2年後の2022年には北京冬季五輪が予定されている。
オリンピックはしばしばきわめて政治的である。思い出せばソウル五輪の前には、1980年モスクワ五輪はソ連のアフガニスタン侵攻に抗議する米国、日本など西側諸国がボイコットし、1984年のロス五輪はソ連、東ドイツなど共産圏が対米報復でボイコットしている。そのため東西両陣営が久しぶりに勢ぞろいした1988年ソウル五輪は「壁を越えて」が合言葉になった。
今回のピョンチャン五輪は「北朝鮮の影」を意識せざるをえない。日本の安倍首相も中国の習近平主席も国内で基盤を固め、自分たちのオリンピックも控えているだけに開会式出席は必至である。国際的に影が薄かった(?)韓国の文在寅大統領にとっては存在誇示の絶好のチャンスだ。少し格落ちだが、小池東京都知事はどのタイミングでピョンチャンに出かけるのだろう。新年の東アジアは北朝鮮情勢を念頭に“オリンピック外交”が見ものである。
【PROFILE】くろだ・かつひろ/1941年生まれ。京都大学卒業。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長を経て産経新聞ソウル駐在客員論説委員。著書に『決定版どうしても“日本離れ”できない韓国』(文春新書)、『隣国への足跡』(KADOKAWA)など多数。
※SAPIO2018年1・2月号