その後も、『ウエストサイド物語』『カッコーの巣をこえて』と、四季で主演を重ねていく。

「『ジーザス』は全編が歌だけでしたが、『ウエストサイド』は芝居があって歌があって踊りもある。それを経験して、二十七歳の時に出た『カッコー』が初めての本格的なストレート・プレイになりました。この時に初めて、芝居の面白さに目覚めたんだと思います。『よし、役者としてやっていこう』と。

 もちろん、ミュージカルも楽しかったですし、それまでも一生懸命やっていなかったわけではありません。でも、ミュージカルは歌や踊りで救われるところはありますが、ストレート・プレイにはそれが全くない。だから、人間の心のひだを深めていく芝居のダイナミズムを感じることができたんですよね。それで、歌から芝居へと表現したいことが移っていきました。

 四季で一番大きかったのは、舞台数を物凄く踏めたことです。あの頃は日生劇場で子供向けのミュージカルもやっていましたから。子供は面白くないとすぐに騒ぐ。ですから、どうやって面白くするかをこちらも工夫する。そして、日下武史さんをはじめとする先輩方との共演。その芝居を見ながら表現の仕方を覚えました。稽古場以上に舞台の上が勉強になったんです」

●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

◆鹿賀丈史×市村正親主演ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』日生劇場(3月9~31日)などで全国公演

※週刊ポスト2018年1月26日号

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