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寝屋川監禁死 精神疾患を巡る根深い日本社会の闇

愛里さんが過ごしたプレハブ小屋は簡易トイレと給水タンクを備えただけのわずか2畳半の空間だった

 昨年12月23日、大阪・寝屋川市の一戸建で1人の女性が遺体で発見された。柿元愛里さん(享年33)。発見時の体重は19kg。自宅敷地内のプレハブ小屋で、衣類も身につけず眠るように死んでいたという。

 監禁と保護責任者遺棄致死罪で逮捕された父親の泰孝容疑者(55才)、母親の由加里容疑者(53才)はともに容疑を否認し、「すべては娘のためだった」と供述しているという。捜査関係者が語る。

「閉じ込めた理由について、愛里さんが15才頃に発症した精神疾患が原因だと供述しています。暴れ回って家族に危害を加えることもあり、自傷行為も頻発していたそうです。すでに小6の頃から病の兆候があり、複数の病院で『統合失調症』と診断されたと話しています。監禁も“療養目的だった”と」

 現代版“座敷牢”とでも呼ぶべき地獄の環境で亡くなった愛里さん。現代社会で増加の一途をたどる精神疾患患者だが、その歴史をさかのぼると、同病の患者を「隠そう」としてきた日本社会の闇が見えてくる。

 江戸時代以前の日本では、精神疾患患者が自宅内の一室や土蔵に監禁されることが珍しくなかった。当時、こうした部屋は「座敷牢」または「指籠(さしこ)」と呼ばれていた。1900(明治33)年に「精神病者監護法」が施行され、家族が患者を私宅で監置することが認められた。いわば座敷牢を国が合法化したのである。

 背景にあったのは精神科病院の圧倒的な不足。当時の精神科病床は全国で約5000床しかなく、政府も各家庭で患者を看ることを推奨するほかなかった。

 1950(昭和25)年に「精神衛生法」が成立し、監護法は廃止されたが、法律の変更は即座に座敷牢の消滅を意味するものではない。その後、昭和に入っても自宅内で監禁される患者は多く、古い屋敷には今も座敷牢の名残が残る所もあるという。

 手塚治虫の名作『奇子』を筆頭に、座敷牢をテーマにした作品は、漫画や小説を問わず数多く存在する。

※女性セブン2018年2月8日号

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