T美さんは、「友達の飲みの誘いを2、3度断ったら、『おかしい』と仲間から一斉に責められて、彼との交際を仕方なく白状。そしたら、『9才も年下! 身元、ちゃんと確認したの?』と言われたり、『孫がいるのに、何やっているの』とバカにされたり」とうつむきながら、でもうれしそう。
結婚までは山あり谷あり、大波小波で、やっと結ばれたんだって。
「だから今はすごく幸せ。そうだ、今度うちに遊びに来てね」
そう言って、彼女は小指を出したの。鮮烈だったのは、翌朝の朝食の席。
私とY子はドすっぴんなのに、T美さんはバキッとフルメイク。「年下の男性と恋愛した人は、心がけがちがうわ」と言うと、「朝起きたらすぐメイクするのは、女なら当たり前じゃない?」だって。
◆えっ!? 「再会、お断り」!?
東京に帰ってしばらくして私は、T美さんに「近いうちにおうかがいしてもいいですか?」とメールをした。T美さんの温かい笑顔に会いたくなったのよ。車で全国を回る“ヤドカリ旅”の話ももっと聞きたいし、女として爪のアカを分けていただきたい。
ところが、半日以上たってから届いた返信は──。
「お誘いはうれしいけど、来られるのは困ります。また伊東で会いましょう」
文面から“迷惑”という二文字が透けて見えるんだわ。
「了解。またいつかどこかで」と返信したものの、腑に落ちないったらない。あのときの熱心なお誘いは何だったのよ?
すると翌日、またT美さんからメールが来て、「夫婦と言ったけど、実は結婚はしていないんです」。まさか、旅先の約束を真に受けられるとは思っていなかったみたい。
さっそく同行したY子に、居酒屋で湯豆腐をつつきながらその話をすると、「やっぱりねぇ。夫婦にしては仲が良すぎたもの。でも、なんで行きずりの私たちにウソをついたんだろう」と不服そう。
「きっと、行く先々で“夫婦”と言っているんじゃない?」「なんのために?」「そのときだけ“夫婦”になりたくて、じゃないの?」
そう言うと私は、熱い焼酎をグイと飲んだ。
あれからよ。温泉地で仲良し高齢カップルを見ると、「夫婦気どり?」と疑うクセがついちゃって。意味なく胸がざわつくんですけど。
※女性セブン2018年3月1日号