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蛭子能収氏 漫画家復帰を後押しした“自販機本”への恩義

蛭子さんは自販機本漫画界の大御所(撮影:内海裕之)

 いまやテレビのバラエティ番組でも人気の蛭子能収さんは、1973年に『月刊漫画ガロ』で漫画家デビュー。ところが原稿料ゼロだったため、次第に漫画から遠ざかっていた。そんな状態にある蛭子さんが漫画家復帰のきっかけを与えてくれたのは自販機本だった。蛭子さんに、復帰した当時のことを聞いた──。

 * * *

 26歳の時に漫画誌『ガロ』に投稿したら入選したんですよ。喜んだのも束の間、掲載されてもギャラが出ない。締め切りもないので、徐々に年1回くらいしか描かなくなり、アルバイトで働いていたダスキンの正社員になりました。

 31歳の頃、見知らぬ編集者から電話が掛かってきて、「ファンなのでぜひ描いてください」と。ヒッピー風の男性2人と会って、自動販売機だけで売る『Jam』に掲載すると説明されました。“ああ、俺はこういう本からしか注文来ないんだな”……と思いましたが、「エロの要素は必要ないので、好きなように描いてください」といわれたので引き受けました。

 ストーリーは人殺しで、タイトルも『不確実性の家族』とか真面目でしたから自販機本には不相応でしたねえ。途中からは、エッチなシーンも入れるようにしましたけど、編集者から何か指示されたことは1回もありません。

 毎回12ページで原稿料が7万2000円も出たんですよ。生活費と競艇で消えたけど、会社の月給と同じくらいだから漫画家としてやっていけるかなと思いました。『Jam』をきっかけに他の雑誌からも依頼が来るようになって今がある。だから、恩義を感じているんです。

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