老人ホームで暮らす日系人高齢者たち
『南京』は当初、刊行を渋られるようなマイナー書籍だったが、彼は英語で書かれている同書が、欧米圏で南京大虐殺をアピールするうえでは格好のテキストになると確信したという。
「出版社に交渉して定価の半額で2000冊を買い付け、みずから売り切りました」
さらに著者のアイリスに連絡を取り、バンクーバーとトロントを訪問させ、人脈を活かして多くのメディアに売り込みをかけた。
結果、『南京』は世界的なベストセラーとなる。同書は米国内に複数の仕掛け人がいたが、カナダのジョセフもその一人だったのだ。もっとも、『南京』は引用写真や記述の間違いの多さが指摘され、学術的には問題が多い書籍でもある。
「アイリスは学者ではなく著述家です。書中の資料や調査には完璧とは言えない部分はありました。ただ、長期間のリサーチを通じた労作なのは確かです。従来、欧米に知られていなかった南京大虐殺について、理解の間口を広げた功績は大きい。過去を学ぶ上では有用な書籍だと思います」
ジョセフはそう説明する。