芸能

柳家権太楼の「鰍沢」 落語初体験の客も引き込むパワー

爆笑派の落語家・柳家権太楼の魅力とは

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、現代を代表する爆笑派の落語家・柳家権太楼が、聴き手を選ぶと言われる演目「鰍沢」でみせた、落語初体験の客も引き込むパワーについて紹介する。

 * * *
 福井を記録的な豪雪が襲っている真っ最中の2月8日、柳家権太楼の独演会「権太楼ざんまい」(日本橋劇場)で『鰍沢』を聴いた。三遊亭圓朝が三題噺の会で創作した『鰍沢』は身延山へ参詣に来た男が大雪の中で道に迷うのが発端。マクラで権太楼も福井のニュースに触れていたから、それがネタ選びのヒントになったのかもしれない。この『鰍沢』が、実に聴き応えがあった。

 この日で第24回となった「権太楼ざんまい」は、過去の演目がすべてプログラムに記載されている。主催しているオフィスエムズの加藤さんという人は根っからの演芸好きで、こういうアイディアも落語ファンの心理を知り尽くしている加藤さんらしい。もっとも「客の手元に過去の演目一覧がある」というのは演者にとっては相当のプレッシャーらしく、公演日の2日前にファクスで送られてきた一覧表を見て「これまで出てない噺は……」と、急遽『鰍沢』をさらったのだという。

 権太楼と言えば寄席の爆笑王、滑稽噺の徹底した可笑しさで定評があるが、人情噺系の大ネタも素晴らしい。十代目馬生の型に強烈な感情注入を施した『芝浜』、八代目文楽の型を「権太楼の個性」で染め上げた『富久』、五代目小さんの型を独自にアレンジした『文七元結』などは権太楼ならではの逸品だし、『百年目』『心眼』『たちきり』なども味わい深い。権太楼は「骨太な人情噺の名手」なのである。

 この日1席目に『鰍沢』を演じた後、2席目のマクラで権太楼は「爆笑落語を期待される地方の会で『鰍沢』はできない」と言った。『鰍沢』は、言ってしまえば「雪山で旅人が女に殺されかける」というだけの噺で、そこに笑いも感動も伴わない。ラストも「それで終わり?」みたいな感じでカタルシスに欠ける。確かに聴き手を選ぶ噺だろう。

関連キーワード

トピックス

“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン