国内

認知症の予防には10~15才の記憶を意識的に思い出すと良い

10~15才の頃を思い出すことは認知症予防に有効(写真/アフロ)

 つい数分前のことを覚えていられず、同じ話を何度も繰り返す認知症の女性が、昔の話はイキイキと表現力豊かに話す──。つまり、すべての記憶が一気になくなるわけではないのだ。

 昔の記憶をよみがえらせ、本人がその思い出を話すことで認知症の症状や介護の予防・改善を図るという心療回想法が、介護施設や訪問介護などでも大きな成果を上げているという。日本回想療法学会会長の小林幹児さんに聞いた。

「多くの人が認知症を恐れるのは、記憶がなくなること自体より、記憶が消えることで食事、排泄、衛生維持などの日常生活動作(ADL)に支障が出て、重い要介護状態になることではないでしょうか。心療回想法は、このADLにかかわる記憶が消えないように守るための療法です」と言う小林さん。

 独自の研究で、ADLにかかわる記憶は概ね10~15才の頃の記憶に深くかかわり、この頃の記憶が明瞭であると日常生活動作も維持される傾向にあることを検証した。

 心療回想法が行われている介護施設や訪問介護の現場では、暴力などの認知症の周辺症状が穏やかになったり、要介護度が軽くなったりする人が多く見られるという。

「10~15才の出来事に焦点を当てて思い出し、心療回想士などの聞き手に話しますが、高齢者にとっては60~70年以上も前のこと。なかなか思い出せないこともありますが、当時の社会の出来事を話したり、写真を見たりしながら、丁寧に個人的な出来事をたどると、小さなきっかけからせきを切ったように思い出すことも多いのです」

 そして重要なのはここからだ。単に思い出すだけではなく、聞いている人に伝わるように高齢者自身が自分の言葉で思い出を語ることで、大脳が活性化されるという。

「記憶は脳の中に映し出される映像のような形で思い出されます。その映像を、他者に説明するわけですが、高齢でうまく言葉にできない、言葉が出てこないという人もいます。そこで心療回想士は思い出について事細かに質問し、言葉を補って助けます。

 ここで注意すべきは、思い出のストーリーを追ったり理由を聞いたり、話の矛盾をついたりしないこと。何があったかではなく、思い出したその場面に注目するのです。たとえば公園で遊ぶ場面を思い出したら、どんな遊具で、どんなふうに遊んで、友達とはどんな話をしてどんな気持ちだった?などと聞く。5W(いつ、誰が、どこで、何を、なぜ)ではなく、1H(どのように)が重要で『1H話法』とも呼ばれます」

◆思い出す喜び、話す喜び 同窓会の快感が脳に効く

“昔を思い出して人に話す”。簡単なことのようで、忙しない日々に追われて、親の昔話をじっくり聞く機会はなかなかない。それが脳を活性化するとは…。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン