「結果的に見れば、大東亜戦争によって東アジアの独立が果たされたのは間違いありません。また、東京裁判の誤謬性についても同意します」
ここまでは日本の保守派とも主張が一致する。だが、最後にこう付け足した。
「日本は戦争における台湾人犠牲者に対し、謝罪する必要があると思います」
黄氏の祖父は、かつて日本兵としてパプアニューギニアに渡って死の淵を彷徨い、戦後、台湾に戻った。だが、日本政府から十分な補償は受けられなかった。次の言葉からは、台湾人の日本に対する思いの深さと複雑さが伝わるだろう。
「私にとって、日本はもう一つの祖国。日本のことが好きだからこそ、台湾に謝罪して欲しいと思うのです」
次は、発売直後に本書を購入したという許剣虹氏(会社員・34歳)である。
「私が最も興味を抱いたのは、13章で『日本の“東亜百年戦争”を期せずして中共が継承したことになる』と書かれていた部分です。中国は今まさに戦前の日本と同じ道を歩んでいる」
幕末の日本が欧米のトラウマを払拭するための100年。同じ歩みを、1949年に誕生し、文革や改革開放を経て、現在は覇権国としての地歩を築かんとする中国に見た、と許氏は語る。