だが現実には、国民は給料が上がらない一方で税金や年金の負担が年々重くなり、可処分所得が減って貯金を取り崩さざるを得ない窮状に追い込まれている。このため、日本人はますます消費マインドがシュリンク(縮小)して「低欲望」になっている。話題になるのは「無料」「タダ」のキャンペーンばかりだ。
たとえば、ソフトバンクが自社のスマートフォン利用者を対象に2月と3月の毎週金曜日に「スーパーフライデー」と銘打って吉野家やサーティワンアイスクリームの無料クーポンを配信したところ、店に長蛇の列ができた。NTTドコモも25歳以下のスマホ利用者にマクドナルドやローソンなど提携企業の商品を毎月無料で提供するキャンペーン「ハピチャン」を展開して人気を集めている。また、東京急行電鉄が昨年10月に実施した無料乗り放題イベントは、通勤ラッシュ並みの混雑になったという。
だが、よく考えてみれば、ソフトバンクやNTTドコモは牛丼1杯、ハンバーガー1個を無料にしたくらいでは痛くも痒くもないわけで、両社のスマホ利用者はそれほど割高な料金を支払っているのだ。しかも、牛丼やアイスクリームをもらうために人々は貴重な時間を使って並んでいる。「時は金なり」「タダより高いものはない」ということに考えが及んでいないのである。
ふるさと納税も同様だ。この制度を利用して食材や高級品などを入手する人が年々増加し、2017年度の寄附金税額控除額は約1767億円、適用者数は約225万人に達している。
しかし、ふるさと納税が増えれば増えるほど、それはめぐりめぐって自分が住んでいる自治体の行政サービスの低下を招く。「貧すれば鈍する」で、自分の懐具合しか気にしなくなっているようだ。