「大戸屋」ではタッチパネル式のオーダーなどセルフ化が進む


 今回、実際に2チェーンのセルフ式店舗を訪れた体験を元に、まずは従業員目線でメリット・デメリットを検証してみた。

 松屋の場合、忙しい時間帯は調理に専念することが可能だということ。時間のかかっていた座席への配膳や下膳の手間が軽減されているからだ。特に下膳においては、【食器を下げる→テーブルを拭く→次の客を迎える】という一連の作業が省ける。スタッフが店内作業において一番大変な部分が軽減される仕組みだ。

 大戸屋の場合は、オーダーを聞くという場面においてタブレットが使用可能な客に関しては省力化できるが、タブレットに不慣れな客層に関しては、通常店舗と何ら変わることはない。配膳、下膳に関しても通常店舗と同様である。最大のメリットとしては支払い手段によるスタッフの手間と時間が軽減することぐらいか。

 次に、セルフ型店舗を消費者目線で検証してみると、松屋はランチタイムなど混雑時における着席率の向上がうかがえる。トレイの下膳を客が対応することにより、回転率アップの効果がかなり大きいといえる。

 セルフスタイルで客の負担が増す分、通常店舗に比べて料理が10円安く提供されるのも特徴的だ。中には丁寧な接客やフルサービスを求める客層もいるだろうが、安さや早さのニーズも高いだけに、素早く入店できて10円でも安く食べられるセルフ式を選択する客は増えるだろう。

 また、松屋のセルフ店舗は、横長のテーブル席に目隠しがあるため前の客の存在が見えることなく個別テーブルの感覚で着席することが可能。これは女性客に配慮した試みだ。机を拭くためのダスターも使用前・使用後と区分けされた状態で各座席や座席端のコーナーに用意されており、衛生面においても好感を持てる仕組みだ。

 かたや大戸屋は、今回訪問した店舗ではオーダータブレットやセルフレジを除けば通常店舗とあまり変わったという印象を受けない。実際、私が訪問した時も高齢夫婦がタブレットでの注文ができず、通常のメニューを持ってきてもらい、通常店舗と同様、店員に注文していた。

 新旗艦店としてオープンした際には、スタッフの負担軽減や客の利便性向上を図るとしつつも、「お客様とのタッチポイントは大切に残しておきたい」と説明していた大戸屋。どこまでをスタッフが対応し、どの部分をお客様にゆだねるのか、まだ試行錯誤中なのだろう。席から調理する様子が見えるオープンキッチンも初めて導入したが、すべての席から見えるわけではなく、大きな特徴とはいいにくい。

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