教える側の教師も悩んでいる。
「この項目には、最後に〈言葉のキャッチボールで、友だちが「ナイスボール」だったと思うことを発表し合いましょう〉とあります。しかし、子供同士が評価し合うのは危険ではないでしょうか。
褒め合うにしても、『○○クンを親友だと思っていたのに、僕のことは褒めてくれなかった』といった不満が出る可能性もあります。そもそも我々教師だって何が“ナイスボールな言葉”かなんてわからないんですから」(40代男性教諭)
教科書の内容をめぐっては、「伝統文化の尊重や郷土愛などに関する点が足りない」という意見がつけられ、「パン屋」を「和菓子屋」に変更した教科書会社や、高齢者を登場させるために「おじさん」を「おじいさん」に変えた教科書会社もあった。何が「道徳」なのか、関係者の大人も手探り状態なのだ。
教師にとって最大の不安は、通信簿に記載する「評価」だ。
「テストで点数が出る他の教科と違い、道徳心を客観的に評価するのは厄介です。基本的には子供を傷つけないような書き方をするしかないから、褒めるしかない。しかし、その際には具体的に書いたほうがいいと言われていますから、ますます何を書いていいか分からない」(40代女性教諭)
元文科省の官僚で京都造形芸術大学教授の寺脇研氏はこんな不安を指摘する。