「選ばれた理由は本当にわからないのですが、当時学校で読み聞かせのボランティアをしていたので、『あいつは昼間から暇そうだ』と目をつけられていたのかもしれません(苦笑)。しばらく考えましたが、依頼を拒まない職業的習性と好奇心があったので引き受けました」(杉江さん)
実際に会長に就任してまず驚いたのは、想像以上の忙しさだった。4月はほぼ毎日学校に顔を出し、それ以降も週に1度は“登校”した。
「思いのほか学校外の式典やイベントがあるんです。PTAが作成するすべての書類はPTA会長名で出すので、チェックがすべて私に回ってくる。修正したりハンコを作ったりする作業が煩雑でした」(杉江さん)
最も衝撃を受けたのは、「保護者の権利を守る組織」と思っていたPTAが、実は「上意下達の行政組織」であったことだ。
「会長になってわかったのは、PTAは学校や教育委員会が決定したことをサポートする組織だということでした。例えば教育委員会から『放課後の空き教室を使って子供たち向けの教室をボランティアで開いてくれ』と頼まれたことがありました。小規模の学校で参加する子供が少なくムダの多い行事でも、上からの依頼なので断れません。それ以外にも、やりたくもないムダなことに時間をずいぶん奪われました」(杉江さん)
こうしたPTA役員経験者の悲痛な声は母親の間に浸透しており、さまざまな手段で「逃げ道」が講じられている。
「委員を決める最初の保護者会だけ夫に出席してもらい、『妻は体調が悪い』と主張させるんです。出席者はママばかりなので、男性には強く言えない。うちはこの手で4年間逃げ切っていますが、ママ友の中にはPTAが嫌だからと引っ越す人までいます」(37才・パート主婦)
「以前は役員決めの会議中、部屋の片隅でジッと下を向いて気配を消していましたが、最近はわざとホステス風のド派手な衣装で出席しています。“面倒臭そうな人”と思わせれば、役員に指名されることはありませんから」(40才・事務員)
本誌・女性セブンが小中学校の保護者200人を対象にアンケートしたところ、『PTA役員を率先してやりたいと思いますか?』という問いに「はい」と答えたのはわずか4%。これがPTAの現状である。
※女性セブン2018年4月26日号