「たしかに前近代的なところはありますが、“PTA的な組織”がなくなるのは教師として困ります。格差社会の影響で、家でろくに食事にありつけない劣悪な環境で育つ生徒が一定数存在するし、体中にアザを作って登校する子もいる。そうした生徒のバックグラウンドは家庭訪問だけで把握できず、PTAを通じて入ってくる情報が重要なんです。『誰々さんのところはDVがあるらしい』『父親がリストラされて大変みたい』とかね。ナイーブな話ゆえ、生徒には直接聞けませんから」
どんな組織にも欠点と利点は混在する。今求められているのは、時代に即した学校と保護者の相互扶助組織である。前出の杉江さんが言う。
「親ではなく家庭単位で参加できるようにすればいいんです。奥さんが来られない時は旦那が来ればいいし、おじいちゃん、おばあちゃんが参加してもいい。任期を半年単位にしたり、『昼担当、夜担当』と都合のつく時間帯で仕事を割り振るのも一手です。無償にこだわらず、報酬があってもいい。PTAも近代化する時代に来ていると思います」
都内のインターナショナルスクールに次女(10才)を通わせるAさん(45才・フリーライター)は、学校の姿勢に欧米流の良心を見る1人だ。
「うちの学校にもPTAはありますが、強制は一切ありません。今年の始業式後に娘が持ってきたプリントには『PTAはボランティア活動なので参加は任意です。入ったかたも都合がつかなければ休んでも結構です』との文言があり、役員募集アンケートには『今年は難しいです』というチェックボックスがありました。
仕事の都合でなかなかPTAに参加できませんが、学校の配慮のおかげで罪悪感を抱くことはありません」
実際、欧米の学校でもPTAは存在するが、日本のように参加を強制することはない。とりわけアメリカではPTOというボランティア団体が発達しており、保護者は完全自由参加で募金活動や学校行事のサポートを行っている。
最近は日本でも“脱PTA”を図る試みがなされており、札幌市の札苗小学校はPTAを自由に入退会できるボランティア制に変更。埼玉県草加市ではPTAの代わりに地域住人と学校、保護者でつくる会費ゼロの『学校応援団』を設置する活動が進んでいる。
「子供のために何かをやりたい男性が集まって先生たちと意見交換やイベント活動をする『おやじの会』も全国に広まっています」(加藤教授)
PTA問題に詳しいジャーナリストの大塚玲子さんが、昨年SNS上で保護者や学校職員にPTAに関するアンケートを取ったところ、任意加入の事実を周知していたところが3割弱、このうち加入意思の確認をしていたところが14%だったという。
「まだ周知徹底とはほど遠い状況ですが、入会しない人が増えたことで、少しずつですが変化の兆しが見えてきています。今年の春、この数字がどれだけ増えるか。新設学校の中には最初からPTAを作らないところも出てきているし、元来、『PTAとはかくあるべし』という定義はない。重要なのは、『子供にとってなにが大切か』ということ。もうPTAに縛られる時代ではないのです」(大塚さん)
誕生から70年を超え、PTAは今岐路に立っている。
※女性セブン2018年4月26日号