戦後、アメリカは日本に大変興味を持っていた。進駐軍として多くのアメリカ兵が日本に来て、日本人やその日常に触れた体験は大きな意味を持つだろう。1950年代、日本を舞台にした映画が多数作られた。代表格はマーロン・ブランド演じる米軍人が日本女性と恋に落ちる『サヨナラ』(1957年)だろう。軍国主義のイメージは後退し、女性が前面に出てきた。
その後、一旦ブームは落ち着き、再び盛り上がりを見せたのは1970年代だ。その頃になると太平洋戦争を冷静に描けるようになり、真珠湾攻撃を題材にした日米合作『トラ・トラ・トラ!』(1970年)が公開された。
1980年代に入ると日本文化が描かれるようになる。『ベスト・キッド』(1984年)はいじめられっ子の少年が日系人に教わる空手を通じて成長する物語だ。そこでは強さとは何かという武士道に通ずる哲学が説かれた。他にも日系自動車工場での日米文化摩擦を描いた『ガン・ホー』(1986年)、日系企業のビルを舞台にし、日系人社長が成功者として登場する『ダイ・ハード』(1988年)などが公開された。
日本が世界経済を支配すると思われた1990年代初頭の『ライジング・サン』(1993年)は経済摩擦を絡めたサスペンス映画だった。
その後、再び日本ブームが落ち着いた後、2000年代に入って『ラストサムライ』(2003年)、『キル・ビル』(2003年)、『SAYURI』(2005年)、『硫黄島からの手紙』(2006年)などが次々に公開された。武士道、日本文化、芸者、戦争と多面的に取り上げられていることがわかる。「日本」がある程度時間をかけて浸透してきた結果だ。