それから三年、四年と我慢し続けたが、睡眠薬が手放せなくなり、体重も10キロ以上減った。毎日“金曜の終業時刻”の事だけを考えて無心で仕事し、またすぐに訪れる月曜の朝に絶望する日々を繰り返す。そうして野村さんは完全に壊れた。
「心ある同僚が、別の上司に事の顛末を話してくれました。それでやっと部署移動が決まりました。しかし、その女性上司は僕が“逃げた”とか“使えない”とか今も触れ回っているようです。仕事ができる人だったし、派遣社員なので特定の部署や仕事内容での契約になっていたから、解雇したり部署移動させるのは厳しい、という会社の判断のようです」
埼玉県の某官公庁に勤める富田健一さん(仮名・20代)も、女性上司からの度重なるパワハラを受けて、退職を余儀なくされた一人だ。公務員として定年まで働くつもりだったのに、人生設計が大幅に狂わされた。
「元々要領がよくないことはわかっていますが、何をしてもクズ、バカと罵倒されて、持ってきたお弁当を見て“まずそう”とか“汚い”とか言われて……。まさか社会人になってからいじめられるとは思いませんでした」
富田さんは、仕事のことだけでなく、容姿についても非難されるのをじっと耐え続けた。
「ストレスから食べるのをやめられず、半年で15キロも太りました。そしたら、女性上司は毎日“豚”といって罵ってきました。髪も抜け始め、やはりカッパだハゲだと笑われて……。それでも耐えていると、今度は薄毛や肥満を“劣った血筋”などと、まったく関係のない私の親や先祖にまで言及し始め、周囲の人まで笑い出すようになりました。もう我慢ならず、あなただって人のことを言えた容姿ではないし、売れ残って嫌われているじゃないか、みたいなことを思わず言っちゃったんですよ」
直接、性的な接触をすることだけがセクハラではない。容姿やプロポーションについてあれこれ言ったり、結婚や子どもはまだなのかと何度も聞くのもセクハラだ。だから、富田さんの反論もセクハラ発言には違いないが、売り言葉に買い言葉で耐えきれず吐き出してしまったものだった。ところが、自分が言ったことをそのまま言い返されたその女性上司は、大声で泣きだした。そして、所属部署長だけでなく、所轄局長にまで富田さんの「セクハラ」を訴えた。