スプリング・キャンプ中、ニューヨークのメディアの重鎮記者は大谷詣でに熱心だった。NYポスト紙のベテラン記者であるケビン・デービッドオフは、スプリング・キャンプを振り返る記事で大谷をこう評した。「新人の大谷は投打でかなり苦しんでいるので、エンゼルスは5月中旬まで3Aのソルトレークでプレーさせるオプションを選択するだろう。その上で、大谷は6月中旬にメジャーに昇格させ、二刀流で起用する責任を負うだろう」。
同氏の予想は大きく外れた。だがそのおかげで、日本のゴールデンウイークという最高の時期に、「大谷VSヤンキース」という日米の野球ファンが注目するカードが実現することとなった。
このシリーズで大谷が対峙するヤンキースの田中将大は、エンゼルスに相手に過去3年間で3試合に先発して1勝0敗、防御率1.27(エンゼルスタジアムでは0.63)、被安打率.197と抜群の成績だ。今季もすでに3勝をマークした田中は、5年間で55勝30敗とメジャーを代表する投手となった。その田中と大谷はプロ1年目の2013年に対戦し、11打数ノーヒット(6三振2四死球)と完膚なきまでに抑えられている。
あれから5年。メジャー27位タイの約24億円の年俸を稼ぐ田中と、メジャー最低年俸の約6000万円でスタートした大谷のメジャー初対決。ストーブリーグで両軍が繰り広げた「大谷争奪戦」というスパイスが加味されて、ますます目が離せなくなった。
【PROFILE】古内義明(ふるうち・よしあき)/立教大学法学部卒、同時に体育会野球部出身。1995年の野茂英雄以降、これまで二千試合を取材。著書に、『メジャーの流儀~イチローのヒット1本が615万円もする理由』(大和書房)など、これまで14冊のメジャー書籍を執筆。(株)マスターズスポーツマネジメント代表取締役、テレビやラジオで高校野球からメジャーリーグまで多角的に比較・分析。立教大学では、「スポーツビジネス論~メジャーの1兆円ビジネス」の教鞭を執る。