また子世代のところへ親を呼び寄せる場合は、新しい環境に対する親のストレスに要注意。都市生活と田舎暮らしの間にも、目に見えない違いがたくさんあります。長く別々に住んでいた親子は、表面に出ないさまざまな価値観の違いが生まれているもの。親子だから何とかなると安易に考えない方が賢明です」
同居による在宅介護は、“自分しかいない”と抱え込みやすく、うつや介護離職のリスクも高いともいわれている。
「また、離れたところに住む親元に通いながら行う『遠距離在宅介護』は、距離がある分、親との関係を客観視でき、自分の生活を守れるメリットがあります。必然的にケアマネジャーなどの介護職が介入するので、相談しやすく抱え込まずにすみます。
ただ距離にもよりますが、移動にかかる費用や、心身の疲労は侮れません。自分が通える回数や介護力をしっかり決めて割り切らないと、“足りないのではないか”“もっとできるのでは”という罪悪感に苛まれる人も多いようです。いずれにしても在宅介護は、介護家族や要介護者の限界を、いつも心に留めることが大切。
●介護家族が心身ともに疲労困憊、眠れない、虐待しそう、離職を考えるほど仕事に支障が出て来たとき
●要介護者が食べられない、トイレに行けない、火の始末ができないなど、ひとりで過ごせなくなったとき
この場合、施設介護などを検討するタイミングです」
「施設介護」は、介護の負担の大幅減はいうまでもない。
「特別養護老人ホームや老人保健施設などの福祉目的の施設、認知症対応に特化したグループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などなど、今、施設はたくさんの種類があり、費用や入所の要件、介護・医療の手厚さなどがさまざま。さらに施設ごとに雰囲気や特色もあります。単に“在宅介護が難しいからとりあえず施設へ”という感覚で考えていると、取り返しのつかないミスマッチが。
手厚い介護や医療的ケアが必要か、自立支援を重視するか、看取りまでお願いしたいのかなど、入所後の先々まで考え、そして何より親本人の気持ちに沿う選択を、慎重に検討しましょう」
※女性セブン2018年5月10・17日号