唐突に思えた韓国、米国との首脳会談の決断も、正恩氏が直後に訪中し習近平氏と面会することで同条約の枠内の外交であるとアピールしたのだ。

 そして専門家はそれが成功したと考える。

 条約には同時に、中朝双方のいずれかが第三国から武力攻撃を受け、戦争状態に陥った場合には、他方の締約国が軍事上の援助に全力を挙げる義務を負う、という「自動介入条項」がある。

 6月までに行われる見通しの米朝首脳会談で期待に沿う成果がなければ、トランプ米大統領が北朝鮮への軍事攻撃に踏み切る可能性も取りざたされる。

「北朝鮮は条約に基づいて中国と協議した。北朝鮮が攻撃された場合、中国は応戦に手を貸せ」正恩氏の挨拶には、そうした要求が込められている、と専門家はみる。

 思いつきや気の迷いと見られた正恩氏の突飛な行動は、実は綿密な計算に裏付けられているとする声が昨今聞こえてくるようになった。

 正恩氏は核・ミサイル開発に邁進する一方で、昨年秋には外交攻勢による局面転換を決意していた。

 北朝鮮関係筋によると、正恩氏は昨年10月の党政治局拡大会議で、国際的な制裁網の粉砕のため「果敢な外交戦」を指示。「核武力は間もなく完成する。今の危機と困難は、好機が到来する前の一時的な緊張と苦痛に過ぎない」と述べて、会議を締めくくったという。

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