国内

最後のかくれキリシタンの島 なぜ新世界遺産から消されたか

登録勧告された大浦天主堂(時事通信フォト)

 国内22番目の世界遺産へ──「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が脚光を浴びている。江戸幕府による禁教下で、密かに信仰を守り抜いた人々の歴史に光を当てる取り組みが、実を結んだように見える。しかし、その枠組みから“最後のかくれキリシタン”の存在が抜け落ちていた。6月1日に発売予定の新刊『消された信仰』で真相に迫ったジャーナリスト・広野真嗣氏がレポートする。

 * * *
 四畳ほどの小部屋に座した和服姿の古老は、朗々と祈りを捧げ始めた。

「でうすぱーてろ、ひーりょう、すべりとさんとの三つのびりそうな一つのすつたんしょーの御力をもって始め奉る、あんめいぞー」

 文言の意味は、わからない。この祈りは、約45分間止むことなく続いた。

 聖書のようなテキストはない。その間ずっと、古老の眼差しは壁に備えつけられた木棚の内側に注がれている。そこには、「ちょんまげ姿の男」を描いた一枚の絵が掛けられていた。

◆ちょんまげのヨハネ

 ここは、九州の北西端に位置する生月島(いきつきしま・長崎県平戸市)。この謎めいた儀式は、「かくれキリシタン」が400年以上も守り続けてきた「オラショ」と呼ばれる祈りだ。祈りを捧げる対象である不思議な聖画は「御前様」と呼ばれている。“ちょんまげ姿の男”は、イエスに洗礼を授けたヨハネを描いたものだという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン