コンテナの中には分解された旧ソ連製のミグ21戦闘機や地対空ミサイルシステムなど、夥しい数の通常兵器のパーツが隠されていた。積み荷はキューバの軍港で船に積まれ、北朝鮮に向かう途中だった。
過去最大級の武器密輸の隠蔽を指示したのは、北朝鮮最大の海運会社「オーシャン・マリタイム・マネジメント社(OMM)」。OMMのネットワークは世界中に広がっており、関連企業187社が海運業や製造業、金融などを幅広く手がけていた。
捜査を重ねると、OMMの主要なフロント企業「ミラエ・シッピング香港(香港ミラエ社)」の代表者として日本人A氏の名前があがった。
香港ミラエ社は貨物船の運行手配や海外送金を通じてOMMの活動に携わり、明白な制裁違反を行っていた。その代表者であるA氏は少なくとも14社の香港企業を取り仕切り、8隻の北朝鮮関連船舶を所有するキーマンだった。
A氏が取締役を務める別の企業Z社の事業所は東京・新橋の雑居ビルの一室にあった。北朝鮮への制裁強化を訴える日本政府の目と鼻の先に、核・ミサイル開発につながる制裁違反で暗躍する日本人がいたのだ。
だがZ社自体が制裁違反を幇助した確証はなく、日本国内の居住者(A氏)が海外で国連制裁違反をしても(香港ミラエ社)、国内法では裁けないため日本の司法はA氏を取り締まれない。
北朝鮮のネットワークに関連する日本人はA氏だけでない。北朝鮮の対外活動の拠点であり、過去に北朝鮮関係者の「巣窟」と呼ばれた日本には、様々な「対北協力者」が存在する。