実際、日本製品は北朝鮮に「ダダ漏れ」している。
2006年以降、日朝貿易は全面禁止されたはずだが、北朝鮮の高級デパートではヤマハの楽器やセイコーの高級腕時計などが堂々と陳列されている。昨年9月に北朝鮮が6度目の核実験を強行した際、安倍首相は「最大限の対北圧力を加える」と明言したが、その数日後に日本国内で生産されたとおぼしき岩手産の醤油や神戸産の日本酒が北朝鮮のスーパーで売られていた。
最大の問題は、日本の対北朝鮮制裁が二国間の貿易という古いモデルを前提としており、制裁違反の目的で第三国に潜む北の工作員や協力者との取引を取り締まる国内法がないということだ。グローバル化した非合法ネットワークに対応して、日本政府は今すぐに法律をアップデートして、“抜け穴”を塞ぐ必要がある。
各国に「制裁強化を」と訴える前に日本政府自身がやるべきことは多い。
●ふるかわ・かつひさ/1966年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1998年ハーバード大学ケネディ政治行政大学院にて修士号取得。1999年読売論壇新人賞優秀賞受賞。科学技術振興機構社会技術研究開発センター主任研究員などを経て、2011年から4年半、国連の「専門家パネル」委員を務める。その経験をまとめた『北朝鮮 核の資金源「国連捜査」秘録』(新潮社)が話題に。
※SAPIO2018年5・6月号