林:小説に出てくる女性といえば、お金持ちの男に養ってもらう奥さんか、愛人くらいしか描かれなかった時代なのに。でもスカーレットは夫そっちのけで起業して、道を切り拓いていく。現代の女性にも通じるものがあると思いますね。『私はスカーレット』では彼女のそういうタフな部分を表現するためにも、時代背景や風俗描写もすっ飛ばさず、しっかり描写していくつもりです。
龍:パートナーとの別れを経た女性が、その後の第2の人生をどう作り上げていくか、という点では現代の女性たちの立場とも置き換えられると思います。人生100年時代といわれる今の時代ならなおさら、出会いと別れの繰り返しですよね。ずっと独身でいる女性も少なくありませんし、スカーレットのようなアグレッシブで強い女性が日本でもどんどん増えていけばいいな、と感じています。
林:スカーレットの生き様が面白いのは、1人目の夫も2人目の夫も全然愛してないところ。今では考えにくいですが、結婚生活に愛がない。でもそれが普通だった時代も確かにあったんですよね。
龍:そういえば、宝塚では舞台のお化粧は自分でするんですよ。『風と共に去りぬ』のときももちろんそうだったのですが、私は映画とまったく同じスカーレット用のウィッグを作ってもらいたくて、アメリカに映画の生写真を買いに行ったこともありました。
林:えー! わざわざ写真を買うためだけに渡米!? 龍さんが?
龍:はい。古い映画だったので、国内ではオークションでも全然見つからなくて。だからアメリカのそういった写真を売っている専門店まで行って、段ボールの中をゴソゴソしながら『GONE WITH THE WIND』って書かれてあるものを何枚も探し出してきたんです。
林:宝塚の皆さんって、ヘアメイクもそこまでこだわるの?
龍:人によります。すごくこだわる人もいれば、そこまで本物に寄せなくていいという人もいます。でも生写真だと細かいところまでわかるから、役の細部がすごくリアルになるんですね。
アシュレのたすきの結び方が本来はどうなのかとか、髪の分け目はどっちだとか。スカーレットがタラを走っている写真も1枚だけ見つけることができたので、舞台のあいだはその写真をずっと飾って眺めながら役作りのイメージをしていました。
林:すごい情熱! もう宝塚は卒業されましたけど、今の龍さんのスカーレットもぜひ観てみたい。いつか帝国劇場あたりでぜひ『私はスカーレット』を演じてくださいね。
※女性セブン2018年6月21日号