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これからが旬の「鱧」 京都の伝統、そして東京の革新

京都「堺萬」の鱧の薄造り(撮影/岩本 朗)

 鱧(ハモ)の旬である。なぜ鱧は高級魚となったのか。本場・京都で鱧はどのように捉えられているのか。グルメをはじめ幅広い分野で活躍するジャーナリストの小川フミオ氏が綴る。

 * * *
 梅雨がやってきた。鬱陶しいというのが一般の人の思いだけれど、食いしんぼには嬉しい季節なのだ。とりわけ京都の食通が珍重する鱧。「鱧は梅雨の水を飲んで美味しくなる」と言われるくらいで、6月から8月にかけての抱卵時期が旬なのだ。

 もともと、海から遠い京の都で庶民に愛されてきた歴史を持つ魚である。理由は長い時間運ばれてもへこたれない生命力ゆえ、夏でも鮮度の高い美味を味わえると評価されてきた。時代は移り、いまや鱧は、鮎やすっぽんやうなぎといった“川魚”と並んで、京の会席料理を支える高級魚だ。

 淡泊な中に深い味わいがあって上品。かつ「骨切り」という小骨を砕きつつ皮一枚を残す調理技術は習得に時間がかかる。誰でも簡単に手がけられるわけではない。そこも高級魚の由縁である。

 関西では鱧はスーパーの鮮魚売り場で買えるぐらいポピュラーだけれど、出汁をはじめ、プロフェッショナルが手がけるものは、ひと味もふた味も違う。

 夏の京都では、鱧の様々な料理が楽しめる。薄造り、ぼたん鍋、鱧しんじょう、焼き霜造り、湯引き、鱧寿司は代表的なもので、愛されてきた食材だけに料理の種類はじつに豊富だ。

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