国内

和食がユネスコの“遺産”に指定されたのは“絶滅危機”だから

『菊の井』代表取締役の村田吉弘さん

『きょうの料理』(NHK Eテレ)の放送開始から今年は61年で、テキスト版は60周年を迎える。日本の食文化が劇的に移り変わった激動の時を見守ってきたこの番組とともに、第一線で料理の変遷を見つめ続けてきた料理人は、この時代に何を思うのか。村田吉弘さん(66才)に食を通じて繋がる、あしたに届けたい珠玉のメッセージ。

 * * *
 料理人がこだわる無駄なことは省いて、どんな人でも同じようにおいしく作る秘密を教えてあげる。それが『きょうの料理』に出演する役目なんだと考えてやってきました。

 それで考えたのが割合で教える和食の基本。和風の煮物の味付けは、しょうゆとみりんが1:1。これでいい。「割合でおせち」、「30分でおせち」なんて特集もやったら、これもすごく人気があったね。

 2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、「和食って世界で認められてスゴイ!」と思っている人も多いけど、これは違います。「和食はすでに絶滅危機にあるから、みんなで守っていこうと世界と約束した」ということ。絶滅の危機にあるのは、ひじきの炊いたん、切り干し、おから、きんぴら、煮豆…使う食材は多少違っても全国どこのお母さんたちも作っていた料理です。

 日本人が何百年も食べてきた食事がここ数年で急激に変わり、生活習慣病もどんどん増えている。自給率もない国でこのまま行ったら、日本の子供たちは飢えへんか?

 今こそ、日本人として和食の原点に立ち返る時。手軽なアレンジ料理もいいけれど、これからは昔の日本人が何百年と食べてきた基本の和食をまた教えなければならない。それができるのは、『きょうの料理』だけだと思うのや。

【PROFILE】
村田吉弘さん(66才)●『菊の井』代表取締役。『日本料理アカデミー』理事長。『一般社団法人 全日本・食学会』理事長。京都の老舗料亭『菊乃井』の長男として生まれる。京都府文化功労賞などを多数受賞し、和食の伝承に力を注ぐ。

※女性セブン2018年7月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン