思えば、尾上寛之は、子役デビュー後、不良メンバー野球部が甲子園を目指して奮闘する『ROOKIES』(TBS系)で、へらへらしながらも体当たりの守備を見せる今岡役でいい味を出し、大河ドラマ『龍馬伝』(NHK)ではのちに初代総理大臣となる伊藤俊輔役。長時間ドラマ『忠臣蔵~決断の時』(テレビ東京系)では、最年少の赤穂浪士・矢頭右衛門七を演じている。
矢頭右衛門七は、映画・ドラマの歴史の中で、将来を期待される若手俳優が演じる美剣士役として知られる。かつて野村義男や今井翼が演じた伝統的な役柄だ。二枚目も三枚目も善人も悪人もどんとこい。期待の若手から早くも名脇役の貫禄を感じさせる。『剣客商売』(フジテレビ系)の見習い剣士役で寺島しのぶに道場でしごかれていた時代を見ていた私としては、「りっぱになって…」という気持ちでいっぱいである。
今シーズンは『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)で横領に手を染める男、『ザ・ブラックカンパニー』(CS放送フジテレビTWO)では勤め先のハンバーガーショップの仕事を愛しながらも危機に見舞わられる男、6月に放送された2時間ドラマ『月曜名作劇場 森村誠一サスペンス おくのほそ道迷宮紀行』(TBS系)でも怪しい関係者で出ている。全部事件がらみというのもすごい。この働きっぷりは、勝手に創設した「2018年上半期事件ドラマ男優賞」にふさわしいと思う。おめでとうございます!