「本来、メディアは全力を挙げて得体の知れない事件と向き合い、なぜこんな事件が起きたのかを掘り下げて取材しないといけません。しかし、今は悪口ばかりで、新幹線殺傷事件の小島容疑者についても『犯人は異常者』『犯行は病気だったから』と短絡的に報じるだけです。粘り強い取材を積み重ねて事件の本質を追究し、それを世の中に還元することで社会をよりよくするという大切な使命が失われています」
◆凶悪事件の犯人の親の取材は人権蹂躙以外のなにものでもない
使命を失ったメディアは、殺人犯が社会に牙をむいた時、どのようにその役割を果たせばよいのだろうか。田原さんが言う。
「そもそも取材するということは、他人のプライバシーに土足で踏み込むことです。凶悪事件の犯人の親に話を聞きに行くことは、完全なプライバシーの侵害で人権蹂躙以外のなにものでもない。それでも一線を越えて取材するためには、その事件が“自分にとって何を意味するのか”を問い、報道する意義を考えないといけません。
安易な悪口やバッシングに走るのではなく、一人ひとりが自分の問題として、事件や出来事の意味を世に問う姿勢が必要です。それこそが先の見えない時代において、メディアに求められる役割です」
新幹線殺傷事件をはじめとする「座間9遺体遺棄事件」や「大阪民泊殺人事件」「静岡看護師遺棄事件」等大きく報じられた一連の事件は、奇しくもメディアの歪みをも浮き上がらせてしまった。
※女性セブン2018年7月19・26日号