一九八一年、早坂暁脚本、深町幸男演出のテレビドラマ『夢千代日記』では吉永小百合扮する主人公の同僚の温泉芸者を演じた。

「早坂さんの脚本が一枚ずつしか上がってこなくて次どうなるか分からないのを深町さんが上手く演出してたわね。ポッと遠景で雪の中から湯気が出るような景色を撮ったり、町の灯りを撮ったり。

 そういうところから役者は役を読み取っていくものですよね。新宿あたりではホステスやれない人たちが吹きだまりに肩寄せ合って生きているという感じを出しました。あそこでしか生きられない人間。『芸者は芸だよね』とか一端のこと言いながら、自分は『貝殻節』しかできないような三流芸者。それでも、見栄とか張りとかあるのよね。そういう人間がいることを学ばせてもらいました」

 大病を患い、七十を超えても、今なお精力的に映画出演を続けている。

「仕事は来た順で考えています。スケジュール的にやれるか、やれないか。それだけです。

 気づいたら転職しなかったのよね。それは仕事が途切れなかったから。主体性がなくて役も何も選ばないできたから、なし崩しで続いたんだと思う」

●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

■撮影/五十嵐美弥

※週刊ポスト2018年7月13日号

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