スポーツ

最速119km“神ピッチング” 14歳女子の「甲子園への思い」

「普段はふつうの女の子です」と笑う

  夏の甲子園に向けた地方大会が始まっている。さらに、来年以降の甲子園を目指す中学生球児たちも連日の練習に励んでいる。そうしたなかで、周りとは少し違った思いを持つ「女子中学生」がいる。中学生の硬式野球・ボーイズリーグ日本代表候補に名を連ねる中学3年生の島野愛友利さんだ。『永遠のPL学園』などの著書がある、ノンフィクションライター・柳川悠二氏が彼女の思いを聞いた。

 * * *
 坊主頭がほとんどのチームメイトの中にあって、ポニーテールに髪を結った少女の存在感は際立っていた。彼女の手には、所属先の大淀ボーイズ(大阪)の関係者から託された「1」番の背番号が握られていた。

「ショートカットだと髪がくくれなくて、かえってピッチングの邪魔になる。それにボーイッシュすぎたら、男の子か女の子か分からなくなるじゃないですか。普段はふつうの女の子です(笑)」

 4月に開催された中学硬式野球・ボーイズリーグの日本代表を選出するトライアウト。関西地区の各チームから推薦された選手の中に、ひとりだけ女子選手がいた。それが大淀ボーイズの中学3年生・島野愛友利さん(14歳)だった。

 投手としての最速は119km。これだけでも男子と渡り合える球速だが、それ以上に女子特有の柔軟性をいかし、低い重心から鋭く腕を振り抜く投球フォームが目に留まった。稲村亜美の“神スイング”ならぬ“神ピッチング”。

「力ではなく、男子にはない柔軟性を生かしたキレのあるストレートで勝負したい。低い重心から、できるだけ打者に近づいてボールをリリースする。ボールの回転数は意識しています」

 島野さんの5歳上の兄は大阪桐蔭に進学して甲子園出場を果たし、1歳上の兄もまた大阪の強豪・履正社に今春、入学した。兄の応援で行った甲子園は、球児なら誰もが憧れる場所。あの聖地に立ってみたい。その思いは当然、少女に芽生えたはずだ。

 しかし、現在の日本高等学校野球連盟の規約では、女子選手が高校男子の硬式野球部に入部することはできても、試合に出場することはできない。もし彼女が「甲子園を目指したい」と宣言すれば、大きく高野連を動かすことも可能ではないか──。突飛な提案ではあるが、それぐらいの逸材に思えてならなかった。島野さんに対し、率直にぶつけた。

「もちろん、甲子園に立ちたいと思ったことはあります。自分の力がどこまで通用するのかも試してみたい。だけど、女の子だし……。どうやっても甲子園に行けないということは、野球を始めた頃からわかっていたような気がします。それに、いつかは男子に追い越される。今でも、芯でとらえられたらボールが飛びますし。努力してもどうにもならない部分はある」

関連記事

トピックス

昭和館を訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年12月21日、撮影/JMPA)
天皇ご一家が戦後80年写真展へ 哀悼のお気持ちが伝わるグレーのリンクコーデ 愛子さまのジャケット着回しに「参考になる」の声も
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
1年時に8区の区間新記録を叩き出した大塚正美選手は、翌年は“花の2区”を走ると予想されていたが……(写真は1983年第59回大会で2区を走った大塚選手)
箱根駅伝で古豪・日体大を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈3〉元祖“山の大魔神”の記録に挑む5区への出走は「自ら志願した」
週刊ポスト
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン