そんな頃、たまたま出かけた店で出会ったのが、翔平さんだった。翔平さんに櫨畑さんは一目惚れ。後日、翔平さんに非婚出産を希望していることを明かし、「交際してほしいわけではないけれど仲よくなりたい」と伝えた。
最初は「映画みたいな話やな」と一笑に付されたが、そのうち彼が櫨畑さんの家に泊まりに来るようになり、ある日妊娠が発覚した。
妊娠を告げると翔平さんは動揺したが、櫨畑さんは同棲や認知を必要としていないこと、養育費もいらないことを告げ、「安定期に入るまで今のかかわりを続けてほしい」と頼んだ。
「彼は定期健診にも同行してくれて一緒にエコーを見ました。出産時にも立ち会ってくれた」(櫨畑さん)
2017年9月12日に長女のひかりちゃんが誕生した。すやすや眠る赤ちゃんの姿を見た翔平さんは「本当にかわいい」と目を細めた。
それでも櫨畑さんと翔平さんは「非婚」を続けている。現在、櫨畑さんは冒頭にある大阪の長屋で暮らす。この家には「ひかりちゃんの子育てにかかわりたい」という総勢15人ほどの友人や知人が、緩やかに出入りする。
各々は「おむつ大臣」「ご飯大臣」「沐浴大臣」などと担当を持ち、できる範囲の子育てや家事を行っている。
「基本的には私が子育てをするのをみんなの余力で手伝ってもらっています。シフト制などではなく、来られる人が来たいときに手伝ってくれるんです」(櫨畑さん)
嬉しそうにそう語る櫨畑さんだが、非婚出産を人に勧める気はないと強調する。
「私は自分のタイミングで産みたかっただけ。いろんな“かぞく”があっていい」
現在も翔平さんは「遺伝子上の父親」として月1回ほどひかりちゃんと接する。櫨畑さんは「産後すぐは頼もしく感じ、不安な気持ちもあったので、一緒に暮らしたい」とふと思うこともあったという。
「遺伝子的なつながりは断ち切れないし、彼とは継続的にかかわることがいちばんかなと。この間、大阪で大きな地震があった時は怖くなって“パートナーがいればな”と思ったけど、常日頃から同居が必要かどうかは正直よくわかりません」
そう言って彼女は、明るい表情でこう付け加えた。
「自分が大切な人たちと人生を歩めているので、私は幸せです」
※女性セブン2018年7月19・26日号