他のおばさんたちも一風変ったところがある。「黄金おばさん」は、うつ病をなおすため毎日、小さな金の玉を飲み込む。翌日、便のなかから取り戻し、また──。
一事が万事、この調子で、「私」のレイプ裁判や、老人の死、やくざとの戦いなど次々に事件が起きるが、それがありきたりの女性問題や老人問題に収斂することなく、より広い笑いの世界へと突き抜けてゆく。死など、祖母もおばさんたちも、さらには老人ホームに入っている曾祖母も、笑い飛ばしてしまう生命力がある。『鬼殺し』に続いて白水紀子の訳文もみごと。楽しんで訳している躍動感が伝わってくる。
※週刊ポスト2018年7月20・27日号