まず、主眼に置くのが性能を最大限に活用する「プロユーザー」で、林業や電設業など仕事の道具として必要な人や、本格オフロード走行やアウトドアレジャーなど趣味の相棒として活用する人。
2つ目は、生活の中で4WDを使用している「日常ユーザー」。山岳地帯や寒冷地域でジムニーが生活の足として必要な人たちだ。最後が、プロの道具や本物感に憧れがあり、プロが使っているものを自分が持つことに魅力を感じている「一般ユーザー」。街乗りが主体ながら、4WD性能やタフさを感じさせるデザインに本物感やこだわりを感じるユーザーだという。
確かに、3グループのユーザーをすべて満たしてくれるオールマイティさがジムニーにはある。悪路走破などタフに使うプロユーザーは4WDのローギアの使用シーンも多いだろうし、日常ユーザーの大半は通常の4WDで事足りる。街乗り主体でジムニーに憧れを持つ、いわば“なんちゃってジムニスト”なら、操作レバーを2WDモードにしておけばFR走行になるからだ。
どんな悪路でも受け止めるラダーフレームと、いろいろなシーンを使い分けられるパートタイム4WDを持つジムニーは、日本の狭い道路事情や駐車場事情にマッチしたコンパクトサイズであることも相まって、大雨など異常気象続きの昨今、その走破性はうってつけという声も多い。さすがにカタログ値で見る燃費も良くないし、ほかのクルマのモデルチェンジで驚異の軽量化を実現してきたスズキ車にあって、ジムニーは車重も1トンを超えている。
が、安価で頑丈、長持ち、いざという時に頼りになるのだから、それらのネガを補って余りある。ジムニーはライフサイクルが長いクルマなので、同じクルマに長期間愛着を持って乗ることができ、多少の凹みや傷は、このクルマではむしろ、いい味を醸し出す。こうした要素がジムニストの心を捉えて離さないのだろう。
また、メーカー側もジムニストたちの期待に応え、裏切るまいとする心意気を持っている。再び前出の米澤氏の弁。
「この性能、サイズのクルマを待っていて、喜んで乗っていただいている方、どうしても欲しいと言うお客様がかなりの数、継続的にいます。私もジムニーのオーナーが集まる会を覗いたことがありますが、たとえば細い山道沿いにある渓流で釣りを楽しむ人たちをはじめ、どんな集まりでもみなさん、同じクルマで同じ時間を共有し、本当に楽しんでいて笑顔なんですよ」
さらにジムニー・ジムニーシエラ発表会の席でスピーチしたスズキ社長の鈴木俊宏氏も、まず同社会長でひときわジムニーへの思い入れを持っている父・鈴木修氏の、
「約半世紀、このクルマの生産を継続できたのは、熱狂的なジムニーファンの1人1人が深く愛してくださったおかげ」
というメッセージを紹介。その後、自身も「こうしたクルマは作りづらく、売りづらい時代になってきているのは事実ですが、そういうファンの方々を見捨ててしまっていいのかという思いがあり、今後も細く長くはなるが、ぜひ、続けていきたい」と、ジムニストたちを泣かせる文言を発していた。
ちなみに、ジムニーのMT車の購入比率は3割~4割らしいが、ジムニーもジムニーシエラも、AT車のみになっていくクルマが他社では多い中で、自由な操縦感があるMT車の設定を残しているところもファンの間で高評価だ。
また、今回のフルモデルチェンジではオーバーフェンダー装着で踏ん張り感が出てトレッドも広がった、1500cc(先代は1300cc)のジムニーシエラのデザインもユーザーからウケが良く(ホイールベース、室内長、室内高、室内幅など居住空間はジムニーとまったく同じ。先代より全長は50mm短く、全幅は45mm拡大)、ジムニーシエラのほうも、先代よりかなり販売台数が稼げそうだ。