国内

西日本豪雨で再認識 「笑われても逃げろと言い続けるべき」

あっという間に冠水した(時事通信フォト)

 細かい出来事にその都度、動揺したら生きづらい。人の心は良くないことが起きても、それは重大なことではないと思い、バランスをとる。「正常性バイアス」と呼ばれるその心の動きは、「自分だけは大丈夫」と、異常な事態に襲われているのに正常だと思い込むことをいう。九州出身のライター・森鷹久氏が、「大丈夫だから」と避難しなかった地元の人たちの言い分と、現在の心境についてレポートする。

 * * *
 歴史に残る大災害となっている「西日本豪雨」。死者は218人、行方不明者 は14名(7月19日現在)を数え、道路や鉄道といった交通インフラは大打撃を受け、農林水産関係だけでも被害額は480億円を超す見込みだという。

 いまも連日、復旧の様子が報じられている広島や愛媛、岡山が豪雨の直撃を受ける一日前、筆者が育った長崎、佐賀、福岡の「北部九州地区」にも、まさに「これまで経験したことのないような」大雨が激しく降っていた。家族や友人に連絡を取り、安否を確認するとともに、なるべく早めに避難するようにと、少々おせっかいとは思いつつも、アドバイスを続けたが……。

「雨? まあすごいけど、逃げるまではないやろ」
「土砂崩れがあったって聞いたけど、仕事中やしね」
「昔もあったよね、洪水。久々な感じ」

 7月6日の午前10時過ぎ、複数の知人は「雨がすごい」ことは認めつつも、異口同音に「避難するまでもない」と判断しているようだった。当時北部九州の広いエリアに大雨特別警報が発令されており、すでに重大な災害が起きているという状態だったが、多くの人が「避難」という選択肢を取っていなかったことは、今考えれば異常なことだった。というよりも、特別警報の意味も、緊急の避難指示の意味も、正しく理解できている人はほとんどいなかったとしか思えない。

 確かに九州といえば、夏に発生する台風の通過ルートでもある。筆者も幼いころに何十回も超大型の台風を経験したし、自宅の周りが冠水し周囲に死人が出たことだって一度や二度ではない。だからこそ、台風や水害を大災害だと感じた事はなく、土砂崩れの現場も珍しいことではなかった。仮に被害者が出ても、ごくわずかの不幸な立地に住んでいた人だけに降りかかった話、と思い込んでいた。

「大雨」と言っても、大地震や原発事故に比べてみれば大したことはない、そういう感覚の人が多かった、というのは、台風にが当たり前になっている九州人には理解できなくもない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
川崎春花
【トリプルボギー不倫の余波】日本女子プロ2022年覇者の川崎春花が予選落ち 不倫騒動後は調子が上向かず、今季はトップ10入り1試合のみ「マイナスばかりの関係だった」の評価も
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
「中野駅前大盆踊り大会」前夜祭でのイベント「ピンク盆踊り」がSNSを通じて拡散され問題に
《中野区長が「ピンク盆踊り」に抗議》「マジックミラー号」の前で記念撮影する…“過激”イベントの一部始終
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
『東宝シンデレラ』オーディション出身者の魅力を山田美保子さんが語ります
《第1回グランプリは沢口靖子》浜辺美波、上白石姉妹、長澤まさみ…輝き続ける『東宝シンデレラ』オーディション出身者たちは「強さも兼ね備えている」
女性セブン
9月6日から8日の3日間、新潟県に滞在された愛子さま(写真は9月11日、秋篠宮妃紀子さまにお祝いのあいさつをするため、秋篠宮邸のある赤坂御用地に入られる様子・時事通信フォト)
《ますます雅子さまに似て…》愛子さま「あえて眉山を作らずハの字に落ちる眉」「頬の高い位置にピンクのチーク」専門家が単独公務でのメイクを絶賛 気品漂う“大人の横顔”
NEWSポストセブン
川崎市に住む岡崎彩咲陽さん(当時20)の遺体が、元交際相手の白井秀征被告(28)の自宅から見つかってからおよそ4か月
「骨盤とか、遺骨がまだ全部見つかっていないの」岡崎彩咲陽さんの親族が語った “冷めることのない怒り”「(警察は)遺族の質問に一切答えなかった」【川崎ストーカー殺人】
NEWSポストセブン
シーズンオフをゆったりと過ごすはずの別荘は訴訟騒動となっている(時事通信フォト)
《真美子さんとの屋外プール時間も》大谷翔平のハワイ別荘騒動で…失われ続ける愛妻との「思い出の場所」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン