女優を目指したのは大学生の時だという


藤間:周りの就職活動がきっかけです。大学3年生の時、友人たちが就活を始めていく中で、私だけが、日本舞踊家としての将来が決まっている。これからの人生をあらためて真剣に考え直したときに、これでいいの?って、お芝居への想いが抑えきれなくなったんです。21才からのスタートは遅すぎるくらい。でも、今やらなきゃもう後はない! と一念発起して事務所に入り、オーディションを受けまくりました。

――周囲の反応は?

藤間:家族は大賛成だったけれど、流派の中からは「今のあなたにそんな時間はない」「もっとお稽古に励みなさい」という声もありました。でも、最終的には皆さん、私の女優活動を認めてくださいました。

――現在は初舞台『半神』に出演中。乃木坂46キャプテンの桜井玲香さんとW主演を務めています。

藤間:玲香ちゃんとは今回が初顔合わせです。『半神』は体がつながった「結合双生児」の姉妹の話。姉であるシュラは醜く、妹のマリアは愛らしく誰からも愛される存在。玲香ちゃんはものすごく美しい方なのですが、舞台では醜いシュラを、私がマリアを演じます。お稽古は一日6時間くらいで、その間、ずっと玲香ちゃんとくっついているんです。肌と肌をくっつけ合って、体温まで感じあう中で、互いのにおいすらいとおしく感じてくるというか…(笑い)。

 また、今回の舞台は『八百屋舞台』という急こう配になった特殊な舞台なので、体力的にすごくキツいんです。玲香ちゃんもつらそうだったから、「乃木坂のライブとどっちがキツい?」って聞いたら「半神!」って即答でした。

――お互い、家元として「流派」を、キャプテンとして「乃木坂」という重圧を背負う立場。シンクロニシティーを感じる時はあるのでしょうか?

藤間:玲香ちゃんは最初会ったときから印象は変わらない。柔らかく美しい印象の中に、乃木坂のリーダーとしての芯の強さが垣間見えるときがある。シンクロといえば、ずっと一緒に、くっついて動いているので、しゃべらなくても考えが通じるんです。玲香ちゃんがどこを支えてほしいかとか、次にどこに移動してくるのかとか、自然とわかるようになりました。今は相手の体調まで察するところまで来ましたね。

――初舞台、緊張はありませんでしたか?

藤間:不思議なことに、全くないんです! 日本舞踊の舞台との一番の違いは、セリフがあること。お客さんの反応でこっちもテンションあがってよりよいパフォーマンスができますし、同年代の役者さんと舞台を作り上げていくのも初めて。自分だけでなく、演出家さん、役者さん、そして玲香ちゃん、お客さんと作品をつくっていくことに感動がありました。

――その度胸はやはり祖母・紫さんの血でしょうか。紫さんといえば、女優としても、日本舞踊家としても、そして演出家としても活躍した偉大なかた。孫からみた紫さんはどんな“おばあちゃん”でしたか?

藤間:小さいころの印象としては“変わった人”(笑い)。だって、どこかに出かけるときには、荷物持ちのお弟子さんを引き連れて歩いてる。しかも、ずっと帝国ホテルに住んでいたんですよ!? 祖母が「遊びにおいで」というのでホテルに行くと、部屋に何人ものお弟子さんがずらっと並んで立っている。座らないんですよ! 皆さんが見守る中で、普通に、祖母と孫の会話をするんです。おかしいですよね(笑い)。
 
 祖母は私の前では先生というより、「おばあちゃん」でした。今にして思えば、もっともっと、芸の話をしたかったし、祖母の芸を盗みたかったです。もうちょっと生きていてほしかった。祖母の踊りは「役者の踊り」と言われているんですが、踊りの中に「心」がある。日本舞踊家さんは、いかに形とか動きをきれいに見せるかに意識を置いて踊る方もいますが、歌舞伎役者さんなんかは、「役の心」で踊っているので、あえて美しく見せなくても“役”として存在している。祖母の舞踊を見ると、“役者”だったんだな、って思います。

 女優としてのプライドも、並大抵のものではありませんでした。私、6才のときに歌舞伎座で初舞台を踏んだんです。祖母と、(市川)右團次さん、河合雪之丞さん(当時は市川春猿)さん、(市川)弘太郎さんと兄(藤間貴彦)とで『鶴亀』を踊ったんですね。舞台を見た猿翁さんが『この子は才能がある』と褒めてくださったのですが、それを聞いていた祖母が「私が爽子の年にはもっと踊れたわ!」とむくれたそうで、そばで聞いていた母が驚いていました(笑い)。女優魂ですよね。

――その紫さんの夫・猿翁さんといえば三代目猿之助時代にスーパー歌舞伎をつくり出し、血縁ではなく実力で役者を抜擢するなど梨園の構造から改革。“歌舞伎界の革命児”といわれたカリスマです。

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