加計学園の加計孝太郎理事長(時事通信フォト)
東京医大の裏口入学事件の温床になった私大のブランディング事業。そこには、安倍政権のおかげで悲願の獣医学部新設にこぎ着けた加計学園がいち早く手を挙げ、政府肝煎りの政策でライバルを蹴落として選ばれたことになる。加計学園は獣医学部の新設問題で、「依怙贔屓の末の裏口入学みたいだ」と揶揄されたが、現実に起きた裏口入学事件とも、奇妙な共通点が見え隠れする。
◆誰が影響力を行使したか
文科省の科学技術・学術政策局長だった佐野は、事務次官へ昇りつめる一歩手前だったといわれる。1959年山梨県塩山市(現・甲州市)生まれ。早大理工学部の大学院を卒業し、1985年に科学技術庁入りした。文部省と科技庁が合体した文科省内で、元文部大臣小杉隆の娘婿でもある佐野は科技庁出身のエースとして、出世街道を歩んできた。
内閣府科学技術政策担当大臣だった笹川堯や尾身幸次の秘書官を経て、2005年には私立学校法人担当の高等教育局私学部参事官(課長級)に就任。2016年6月に官房長に就いたあと、東京医大の応募した文科省のブランディング事業にかかわり、東京地検に逮捕される羽目になる。
教育行政を司るエリート官僚がはまった私大入学を巡る汚職事件は、極めて珍しいケースだ。ごく簡単に振り返ってみる。
文科省の佐野のほか逮捕されたのは、東京医大とのパイプ役を果たした医療コンサルタントの谷口浩司(47)。贈賄側である東京医大前理事長の臼井正彦(77)や学長の鈴木衛(69)については、捜査に協力的だとして特捜部も逮捕せず、在宅で取り調べを進めてきた。特捜部が賄賂と認定した裏口入学について、逮捕後、佐野本人は否定しているが、贈賄側の臼井たちはあっさり認めている。